洋画のテイストと情緒豊かな昭和を代表するアクション・ムービー
★★★★★
この作品を観ると色々な洋画を思い出す。まずは石井監督自身がベースにしたというシドニー・ポワチエとトニー・カーチスの「手錠のままの脱獄」。そして、ジュールス・ダッシン監督の「真昼の暴動」。後者は刑務所内での派閥等の描写。前者は高倉健と南原宏治も手錠をつけたままでの脱獄のエピソード。60年代の洋画の醍醐味を邦画に入れ込んだ石井輝男監督の渾身の一作だ。この後、石井監督と10作、そのほか「新網走番外地」の8作と併せて計18作のシリーズとなる。
1作目は白黒映像だが極寒の北海道がリアルに伝わるのと大雪原の描写がシャープに伝わるのが良い。また、刑務所内の生活が入浴、散髪等他の映画では観られないシーンを盛り込んでいるため主人公の置かれた状況がよりリアルに観るものに伝わる(通常、刑務所の描き方は雑居房、独房、作業を描くだけのものが多い)。刑務所内の極寒の厳しい環境や刑務所内の描写のリアルさは「真昼の暴動」と同じ感覚を覚える。
そして、高倉健の不幸な生い立ちも主人公の性格と行動を裏づける重要な要素として多すぎず少なすぎず上手く組み込まれている。
後半の高倉健が南原宏治に無理やり脱獄させられてからあとの雪原の逃避行や疾走するトロッコの追跡劇、蒸気機関車による手錠の切断まで一気に見せてくれる。ラストの高倉健と丹波哲郎との対決も最高。
でも、一番かっこいいのは雑居房の最年長者で同房の者に抹殺対象にされる嵐寛寿郎。自らの正体を高倉健のためにあかして身を挺して無謀な脱獄計画を制するシーンは迫力満点。
今観てもやっぱりかっこ良く、心にしみる昭和のアクションの代名詞として最高な作品と思う(もちろん、放送禁止となった主題歌も情緒を高めている)。
ドス
★★★★★
歌詞がCDでは♪遥か彼方にゃオホーツクになっていますが、モノクロの新宿の街、トレンチコート姿の健さん、BGMにはやっぱり♪ドス〜うお〜おおお、ドスを片手に殴り込み・・
チョッと以外でしたがこれはこれであり
★★★★☆
健さんのキャラは、いつも通りですが、今回は復讐譚ではないので切ったの張ったのはありません。
どちらかというと病気の母親の為に更生したいというのが前提になるので、おとなしめではありますが、南原宏治の脱獄に巻き込まれてのトロッコでのチェイスシーンがクライマックス。
任侠ものを期待してるとちょっと肩透かしかも知れませんが、男同士の情を期待してるのであれば、いくつもぐっと来るシーンはあります。
というか、出てる役者は、みんな期待通りに活躍してくれるのでそれだけで結構満足ですね。
房の中でのパワーバランスを巡るやりとりは、安部徹と南原宏治のいやな奴ぶりを堪能したい。
アラカンは最後に良いところを持っていきますし、健さんと心を通わせます。
田中邦衛も例によって笑わせてくれる。
健さん自体そんなに演技がうまいとは思いませんし、今回は男の色気をみせるようなシーンはあまりありませんが、保護司丹波哲郎とお互いの事情を含んだやりとりはけっこう泣けると思う。
任侠モノではありません!プリズンブレイクモノです!
★★★★☆
題名と健さん主演なところを見ると任侠モノのように見えちゃいますが
実はブリズンブレイクモノです
ゆえにカチコミなどはありません
獄中→脱走→逃避行→列車による手錠切断→大団円で構成されてます
この後、「網走番外地」は石井輝男で10作、他監督で8作の計18作も続く超人気シリーズになるわけですが
それまでの任侠映画路線とは全く違うこの一作目製作にあたっては、東映にあまり理解されず、同時上映「関東流れ者」の添え物扱いで、カラーでさえも撮らしてくれないという超低予算状態だったみたいです(だからモノクロ)
しかしながら、さすが石井輝男、金がかかってないながら山場をうまく作って、最後までドキドキ飽きないように作ってあります
鬼虎が正体を表すシーン・トロッコでの追跡シーン・汽車による手錠切りシーンはほんとドキドキワクワクさせてくれます
また、金が全然かかってないわりに、今となってはけっこう脇役が豪華で
嵐寛寿郎・丹波哲郎をはじめ任侠映画常連の人たちがたくさん出てる他
田中邦衛なんかも出てます
ちょっとひょうきんな健さんに会える。静かな興奮と感動の大傑作!
★★★★★
人の感情とは不思議なもので、イヤな思い出しかない、二度と戻りたくない場所のことが、無性に懐かしく思い出されることがあったりする。このシリーズの主人公・橘真一にとっての網走刑務所は、“寅さん”にとっての所謂「とらや」とは違うが、そこは彼にとっても、そして観客である我々にとっても、どこか懐かしい場所なのだ。
傷害の罪で網走に送られた橘は、時に理不尽な仕打ちを受けつつも、なんとか刑期を全うしようとする。独房に入れられた橘の脳裏に浮かぶのは、貧しい過去と母の姿だった。しかし、もうあとわずかで出所という時に、同じ房の連中の脱獄計画に巻き込まれてしまい……。
1965(昭和40)年4月公開。「本当はカラーで撮りたかった」(石井監督)そうだが、モノクロームのシャープな映像―第2作『続』からはカラー。『続』といっても、物語上の連続性はない―が、北国の寒々とした冷気をリアルに伝えてくる。『ならず者』『いれずみ突撃隊』などで試行錯誤を重ねてきた石井・高倉コンビの才気と人気が一気に爆発。この一作で健さんは、東映のスターから日本映画を代表するスターにのしあがった。このシリーズでの健さんのちょっとひょうきんな仕草・表情は、他ではあまり見られないものである。
とはいえここでの健さんは、押し出しの強さに関してはまだまだ。ダンディーな丹波哲郎、絵に描いたような怪演をみせる南原宏治ら、助演陣―ほぼ皆勤賞の由利徹は第2作から登場―に譲る部分もある。しかし助演陣といえば、なんといってもアラカンさん。彼をめぐる中盤の展開は、映画史上に残る驚きをもって迎えられるものだろう。
映像特典として、予告編とフォトギャラリーを収録。
八木正生による音楽もすばらしい。
最後に。
2005年、この世を去った石井監督はいま、網走の地に眠っている。
そしてその、墓碑の碑文をしたためたのは、健さんその人だ。