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The Constant Gardener

価格: ¥1,130
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: Sceptre
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   イギリス人外交官ジャスティン・クウェイルの趣味はガーデニング。自己流のフリージア栽培に凝り、暇さえあれば、ナイロビにある自宅の庭園で過ごしている。それに、かなり年下の魅力的な妻、テッサを溺愛する夫でもある。一方、テッサはジャスティンとは正反対。社会改革を熱烈に望み、「この世で一番珍しいもの、つまり正義を信じる弁護士」として働いている。その活躍ぶりは、「アフリカ貧者のダイアナ妃」の異名をとるほどだ。しかしそのテッサが、こっそり訪れていた人里離れたケニアのトゥルカナ湖で、死体となって発見される。衣服をはぎ取られ、レイプされて。旅の同行者(愛人?)である、コンゴ系ベルギー人のハンサムな医師、アーノルド・ブルームの姿は消えていた。と同時に、クウェイルの、のんびりした生活も消し去られたのである。

   テッサは、薬品を扱う多国籍企業の情報を収集していた。その企業は、何も知らないアフリカの人々をモルモットがわりにして、致命的な副作用のある、結核治療薬の効果を試していたのだ。彼女の報告書は、夫クウェイルの上司たちの手で始末されていた。テッサのことも始末したのだろうか?どういうわけかすべての謎は、怪しげなイギリス企業、スリービーズ商会へとつながっていく。広告に、「アフリカの健康に、警鐘を!」なるうたい文句を自慢げに掲げている会社だ。ジョン・ル・カレは、この企業を象徴する象徴的なシーンを、ナイロビの死体保管所を舞台に描いている

    その「死体たち」の上には、ぼんやりとした靄(もや)が揺れ動いていた。それは、いっせいに羽音をたてて飛び回る、一群のハエだったのだ。

   本社は、クウェイルに真相を突き止められまいと必死になる。だが、執拗にすがりつこうとする相手の手を巧みに逃れ、彼はスパイとなり、テッサの復讐のため、そして事件解決のために、世界を股にかけた追跡へと旅立つ。ル・カレは、少しも衰えを感じさせない見事な筆さばきで、ロンドン、ドイツ、カナダのサスカチュワン州、ケニヤ、と広範囲にわたる追跡シーンを鮮やかに描き出す。彼独特の、飾り気のない、たたみかけるようなの語り口が冴えわたる。また、自身の16年に及ぶイギリス外務省勤務経験を生かしながら、残酷な策略や人々の軽蔑すべき自己欺瞞を容赦なくあぶりだす手腕は、いやはや信じられないほど見事だ。本書は、悲しくも地球上に存在する、これ見よがしの偽善者を風刺した、ドリス・レッシングの『The Summer Before the Dark』に匹敵する作品だ。

 『The Constant Gardener』は『Tinker, Tailor, Soldier, Spy』にも負けないおもしろさなのだろうか。はっきり言って、負けていない。アフリカが体験した悪夢は、チェスのゲームのような冷戦よりももっと複雑だ。しかも、薬物に関する世界的な騒動は、昔のスパイ合戦よりも小説化するのが難しい。それでもなおル・カレは、粋で、哀愁漂うストーリー展開をして読者を飽きさせない。そして、モラルに照らして許せないものへの激しい怒り(彼の作品の主題である)が、いつもながら熱く熱く伝わってくる。