ピクサーアニメが初めて人間を主人公にしたのが『Mr.インクレディブル』だったが、そのブラッド・バード監督による本作は、ネズミと人間、両方のキャラクターにたっぷり愛情が注がれた逸品になった。フランスの片田舎に住むレミーが、天才的な味覚&嗅覚を持つグルメなネズミという設定がユニーク。あこがれのレストラン「グストー」があるパリに着いた彼が、そのレストランの見習いシェフであるリングイニに協力し、舌の肥えた客も驚かせるメニューを作ってしまう。いくらアニメとは言え、あまりに突拍子のない展開なのだが、ここにピクサーマジックが加わると万人共感のドラマに変貌するのだ。
そのマジックのひとつが、食材や料理。CGアニメなのに実写以上に食欲をそそる映像になっているのは驚くばかり。実物ではなく、おいしく見える「料理写真」を基にしたのが、ピクサーの妙案だ。そしてネズミが人間を“操縦して”料理をさせるシーンなど、アニメならではの笑えるアクションを配したところが、バード監督の真骨頂。映像とともに物語も躍動していく。これ以前のピクサーアニメは、大人が子ども心に戻ってワクワクしたものだが、エッフェル塔がきらめく夜景などパリのロマンチックな風景が挿入されることで、本作は大人のままで感情移入できる点が多い。これもピクサーのマジックである。(斉藤博昭)
共感覚の映像化
★★★★★
共感覚をテーマに作成されているため、映像のイマジネーションが独特で深い。
特に主人公のレミーがキッチンで味見をする場面で、味のイメージに見立てたレーザーのような花火ようようなところが印象深い。
あきらめない心を子どもに楽しく教えられる。
ピクサーの中ではボチボチ、でも平均値からしたら相当上の作品。
★★★★☆
ネズミがフランス料理店の厨房で料理を作る、というのはマジメに考えたら(特に女性)はすごく嫌なんじゃないだろうか。ファンタジーとは言え、そういう話である。ところが、ファンタジーとしてアニメ映画なら避けるであろう「人間からしたらネズミはキモイ」というところも真正面から描くのがこの作品を制作するピクサーの志の高さでもある。て言うか世界中で荒稼ぎする黒ネズミを擁するディ○ニー傘下でそんな話よくやるよなー。
ネズミという忌み嫌われる動物が、「誰もが名シェフになれる」という言葉を信じ、才能によってその道を切り開くというお話は、差別されるマイノリティが才覚によって成功するアメリカン・ドリーム(舞台はフランスだけどね)を象徴しているんだろう。ハリウッド映画で使い古されたそんなテーマをきっちりとした演出で見せてくれる、娯楽映画としては出色の出来です。
でも、イーゴーという本作の敵役が、尺の短さもあってか十分な描かれ方をしていなかったのが惜しい。イーゴーがなぜああなったのか、という背景についてはもうちょい描写があった方がいいし、あと、れミーが何故最後にアレを出したのか、つうのはもうちょっと伏線がほしい。(酔っ払ったアイツのセリフ、あれは伏線とは言えないと思う)
というわけで文句もあるけど、そもそもこんなことを真剣に考えさせられるという意味でピクサー魂あふれる一本ではあります。あと、この映画の水の表現はホントに凄いです。
一番凄いのは、ピクサーが1人の天才だけに頼らずに、組織として一級のエンターテインメントを作り続ける体制を築き上げていることだと思う。1人の天才が引退したらその後どうしようと汲々としている日本の某巨大アニメスタジオとか、ピクサーに人材を派遣したりした方がいいんじゃないかな。
スーッと
★★★★★
映画で見て、また何度もレンタルを借りて
今回購入に至って本当に良かった。と、思いました。
ファンタジーをリアルで切り抜き、夢を考えさせられるストーリーが
この映画を好きになった大きな理由です。
これから見ようかなと思っている方に、
メインメニューの作り、エンディング、
そして、冒頭のディズニー映画の広告の数々にわくわくを、
色々な楽しみ方を様々な方向から与えてくれると思います。
レミーのおいしいレストラン。
たくさん映画を見てきた訳ではない私のレビューですが、
心に響く映画だと感じています。
一番好きなキャラクターはリングイニです。
グストー
★★★★★
亡き人となり、レミーの空想として随所に登場したグストーさん。
彼は、言っていることや考えが誰かに似ているな、と思っていた。
人生において大事な事をたくさん知っていて、そして料理は誰でもできるんだ…と、「夢は誰にでも叶えられる」という精神と似通った言葉。
やはり、彼はウォルト・ディズニーさんの人物像をモデルにしていると感じた。
そんだけ
リサとガスパールがリサパパに連れられて見に行った映画ですよ!
★★★★★
こちらを購入した契機は<>(2009年8月刊、邦題『リサとガスパールえいがにいく』)にそれらしき作品が出てきたからでした。この中に2ページ『レミーのおいしいレストラン』かな、と思わせる絵と鼠が料理をするという記述があり、奥付にも「ディズニーの許諾」取得済みであるとのことわりがあったので確信して、興味を持ったのでした。
まずはレンタルで見て、やられました。感動的なところはアメリカンドリーム路線ですが、「家族」というキーワードはイタリア系かと思われました(何人か制作者の名前がイタリア系なので反映しているのかも)。米国オリジナル版も日本語吹替え版も豪華な声優陣で芝居がうまくて感心しました。翻訳者の腕にも唸ります。実に小気味よく、面白く訳できていて、不自然さを全く感じさせません。特典の制作者・協力者インタヴューは必見必聴です。
これから買う方には是非「コレクターズボックス」をお勧めしたいと思います。豪華本『The Art Of…』がまたもの凄い力の入りようで、レミーの世界に魅せられた者にはたまらない設定資料と周辺美術集です。映画本篇を見ているだけではなかなか気がつかないこと(イーゴの書斎が棺桶のイメージであることなど)も色々とありました。可愛いドゥミタスは大事に使っています。
こちらの作品をわざわざ自作絵本の題材にしたゲオルク・ハレンスレーベン/アンヌ・グットマン夫妻の情熱が伝わってきました。リサとガスパールファンだったお蔭で、レミーに出逢えて本当に良かったと思います。ここ数年での私的ランク最高の作品となりました。