こんな物語なら許せる
★★★★★
ジェイン・オースティンの作品世界に神=語り手となって参加(または侵入)する喜びの余りか、
彼女の作品を愛する者にとっては許せない展開で原作を汚す輩もいる中、本作はとても好感が持てた。
何故だろう、ミッチェルのは許せたのにオースティン作品にこういった創作を加えることにはとても抵抗があって、最初は手に取るつもりはなかった。
しかしこちらのレビューを読んで考えが変わり、購入してみた結果、皆さんのおっしゃる通りだった。
原作の展開に本当に忠実で、抑制の効いた文章はどこか淡々としていて理性的で、ダーシーの心情描写にピッタリ。
語りに粘着な感じが全くせず、ごく自然で、例えばウィッカムとリディアを結婚させる顛末も必要以上にしつこく語ることはしない。
ダーシーの心情描写ときたらこの場面には結構穿った見方も出るんじゃないかなと思っていたので、思いの外あっさり語られていてかえって驚いた。
また、ダーシーの視点だから当然なのだろうが、本作ではジョージアナの存在もかなりクローズアップされていて嬉しい。
彼女については原作にはない兄との場面がかなり付されているが、その描写にも無理がなく、原作を越える拡大解釈はされていない。
欲を言えばもう少し動きのある描写が欲しいなという感じだが(どうも観念的なので)、あくまでも原作を裏側から辿っている形なので仕方ないのだろう。
必要以上の躍動感はダーシーのキャラクターにもそぐわないのかもしれない。
英語が私にはちょっと難しく思われる箇所が結構あって、原作を知っているからこそ通じた感があった。
主語と動詞がかなり離れていたり、長めの挿入句がやたら多かったりして、正統的な組み立ての文章しか読み慣れてない者には少しややこしい。
そう感じる文章は何度か俯瞰的に読み直したり脳内分解・再構築したりして、やっと腑に落ちるという始末。
しかし一章あたりがかなり短いので、区切りをつけてダラダラせず読んでいけた。
『P&P』には玉石混交でこういった趣旨の本がたくさん出ているらしいので、 海外のレビュー(どの続編にも結構多く書かれていてびっくり)も参考にしつつ、
これから幾つか読んでいこうと思う。 それにしても『ペンバリー館』に翻訳があるのなら、こちらにもあってもいいのにな。
Worth Reading !
★★★★★
読んだことに満足感の残る作品でした。
『高慢と偏見』で作者ジェーン・オースティンが描き得なかった(或いは敢えて描こうとはしなかった)ヒーロー側(=ダーシー側)の視点で描くことが本作品の目的であり、かなり吟味しながら原作の流れとプロットに忠実にダーシーを描こうとしている真面目な作品だと好感を持ちました。何よりも、ヒロインエリザベスとヒーローダーシーの会話場面では、原作の会話文をそのまま用いているので、『高慢と偏見』と本作品とはまるで鏡の表裏のようにぴったりと符合しているように思え、安心感を持って読めました。作者(Janet Aylmer)のジェーン・オースティンに対する愛のようなものを感じました。
謎めいて不明点の多いダーシーの行動と心理をうまく解説した小説だと思います。
英語自体も易しいので、辞書は無理して使用せずに読み進めます。本自体も軽く開き易くどこでも読めて便利でした。
これから再度、今度は逐一『高慢と偏見』プロットと本作品プロットとを読み比べながら、Janet Aylmer氏のお手並みを再吟味しようと思っています。
Opinion
★★★★★
What is it about Fitzwilliam Darcy? Two hundred years after he captivated Elizabeth Bennett, readers still can't seem to get their fill of him. This title is just the latest in Darcy-inspired Jane Austen "fanfiction." Aylmer adheres more closely to the original in Darcy's Story, which retells Pride and Prejudice from Darcy's point of view. Big chunks of dialogue are lifted straight from Austen, accompanied by Darcy's own thoughts and perceptions. It's an interesting idea, but Aylmer's reverence for the text stands in the way of creating a lively story. There is no attempt to match Austen's sparkle or to flesh out the period setting, and opportunities to create more drama are missed; for example, Wickham's attempted abduction of Georgiana, which in another writer's hands might be a novel in itself, is dealt with in a few matter-of-fact sentences. As a result, this Darcy seems a dull dog. Nevertheless, the book should appeal to ardent Austen fans, especially if they object to too much tinkering.
Other recommended titles: Pride and Prejudice by Jane Austen
The Fates by Tino Georgiou
原作に忠実で素晴らしい!
★★★★★
だめもとで買ってみましたが、原作に忠実でとても面白かったです。読みこなせるか心配だったのですが、わりと分かりやすい英語で書かれているので、原作の愛読者なら、児童文学が辞書ありで読めるレベル位なら楽しく読めると思います。
挿絵が入っているとのコメントがあったので楽しみにしていたのですが、送られてきた版(表紙の絵が、紳士の首から下もので、紫色っぽいもの)は挿絵がなくてがっかりしました。皆さんのおっしゃるように、表紙の絵がちゃちい挿絵なしの版と、挿絵ありの版両方が売っていました。(挿絵ありをもう一冊買おうかと思います)これから買われる方は気をつけたほうがいいと思います。
作品のイメージを壊す続編が多いですが、これは日本語訳を出しても売れると思います。おすすめです。
こんな作品を待っていました
★★★★★
オースティンが降りてきたのかと思わせるいい作品です。何より読み進めるのが楽しい。もっと先が知りたくなる。時間を忘れて一気に読みました。どんなに時を経ても女性にとって、若く、ハンサムながら気難しく、しかし大変なお金持ちというダーシー氏は全くもって魅力的。その彼をますます好きになるのがこの作品でしょう。翻訳版が出ることをお願いしたいです。