朝日新聞記者がつづるベトナム案内の本。歴史、ことにベトナム戦争について詳しく触れられており、現在にみるベトナム人の気質、国民性との関連性がよくわかり、おもしろい。内容は歴史的、経済的背景をもとに日本との関係を位置づけたうえで書かれているので、読者にとってはいっそう読みやすく親しみやすい。現地の物価や人口密度など、数字に関しても日本との比較が説明されているのもポイントだ。また、著者が撮ったモノクロの写真にはそれぞれ詳しい説明が加えられていて、本書の内容のイメージが把握しやすいし、地域ごとのマップもあるので、実際に現地でその場所を訪れたいと思ったときにも重宝だ。
しかし、内容は歴史、戦争のことなどを中心に、深く掘り下げているので観光ガイド的な食・ショッピングなどの情報は多くない。あくまでもベトナムを知りたい、ベトナムへの渡航をただの観光だけでなくもっと興味深いものにしたい人にぜひおすすめしたい1冊だ。(今西乃子)