「俺たちは終わりだ」ステュアート・コープランドが『ポリス インサイド・アウト』の終わり近くで言う。これはコープランドの手作りのドキュメンタリーで、70年代と80年代に世界を席巻したグループの台頭と最終的な終局を描いたものだ。「目的地にたどり着いたら、旅は終わるんだよ」たしかにそうだが、その旅はたいしたものだった。ポリス(コープランド、スティング、アンディ・サマーズ)が解散して20年近くが経ってから、この元ドラマーで現在は映画音楽作曲家であるコープランドは、当時撮りだめていた50時間以上にわたるスーパー8の映像を編集し、新たなサウンドトラックをつけ、ボイスオーバーのコメンタリーを書き、1本のフィルムにした。完璧にはほど遠いが、ロックのスターダムの混沌状態や最後に空中分解するまでを実によくえぐった内容となっている。すべては76年に始まった。オリジナル・メンバーでバンドがイギリスで結成された年だ。1978年にコープランドがこうナレーションを入れている。「俺たちは、自分たちのみじめな歴史から病んだ皮膚を剥がして生まれ変わる準備を整えていた。約束の地、アメリカへ突撃だ」名声と富が約束され、その間もずっとコープランドはすべてを撮影していった。ツアー・バンや舞台裏のよくある場面だけでなく、ライヴ前のサウンドチェックや、レコーディング、インストア・ライヴまで。まったく、彼はビデオ撮影中のバンドの模様まで記録している。ひとつ、目立つシーンがある。ドラムキットの裏に立てた三脚にカメラを固定し、パフォーマンスの途中でこちらに向かって話しかけるのだ(「ステージの前では、ちょっとしたケンカ中だ」と彼はこちらに言う)。カメラワークはぶれることも多く、パフォーマンスの記録は素人っぽく、言うまでもなく音はやたらと大きく歪んでいるが、ひそかに観察を続けるコープランドのアプローチは不思議とハマっている。そしておなじみの曲を集めたライヴとスタジオ録音のサウンドトラックは、コープランドが“ロボトミー”を施し、“脱アレンジ”したものだが、これがひらめきに満ちている。おそらく最高の部分は、すべてがおかしくなった原因は何だったのか、コープランドが僕たちに告げるチャンスを提供している映像だ。『ゴースト・イン・ザ・マシーン』の頃にはスティング(いつものよそよそしい、ユーモアのかけらもない人格として登場)は他のミュージシャンたちとスタジオで一緒に演奏してなかった。さらに、「お世辞を言うことが、まるで義務のように感じられてきた」という。そしてますます裕福で有名になる一方で、彼らが支払うツケは「俺たち自身の生命力、真髄だった」のだ。ドキュメンタリーであり、旅の記録であり、ビデオ・ダイアリー兼暴露ビデオである『ポリス インサイド・アウト』は、ポリスの真髄をふたたび掴む役に立つことだろう。(Sam Graham, Amazon.com)
「バンドが世界のトップに登りつめるという夢」の物語
★★★★☆
スチュワート・コープランド愛用のスーパー8での撮影が主なので粗い画面ですが、センスある編集と新しく作成された音楽(ポリスの曲のコラージュとでも言うべきもの)や淡々とした語り口で思ったよりも見ごたえのあるドキュメンタリー作品となっています。もちろんひとりのミュージシャンの一方的な視点ではありますが、小さなクラブで始めた無名のバンドが成り上がっていく様をよく捉えていて、たかだか数年で大会場を満員にする世界的なビッグバンドになるというミュージシャンにとっては夢のような話です。特にイギリス出身の彼らにとってアメリカで成功するというのがどれほど重要で大変なことであったかが映像から感じられます。おきまりのアルバム作り、ツアー、移動に営業というドサまわりの初期からプライベート機での移動になる後半までがずっと同じカメラ撮影されていたというのはやはり面白い。解散してしまったバンドではありますがファンとしては本人達が当時充分楽しんでいたように感じられてホッとします。粗い画像や音声で長々と1曲を流さない編集もよかった。意外にも解散直前のシンクロニシティー期の映像が少ないのはもう時代遅れのスーパー8での撮影が少なくなっていたのでしょうか。様々な文献では後期の彼とスティングの対立は結構激しかったようですが、ここでは疎遠になっていくメンバーをカメラが淡々と捉えていてあまり「恨みつらみ」みたいになっていないのがいいです。ポリスの音楽と人が好きなら充分楽しめるDVDだと思います。ただしクオリティーの高い音質の音楽と映像を楽しみたい方には全く向いていません。
我が青春の・・・
★★★★☆
あまり頻繁に新譜情報をチェックしているわけでもないものですから、こんなソフトがリリースされていたこと自体最近把握しました。
ポリスのサードアルバム「ゼニヤッタ・モンダッタ」は、当時小学生だった私が恐らく初めて真剣に聴いた洋楽であり、その後のスティングは高校生の私にとって偉大なヒーローでした。
ポリスの活動停止後は、スティングのソロ活動をリアルタイムで経験していたわけですが、何故かそのバックボーンであったポリスにに関して自分がいかに無知だったのかをこれでもかと思い知った、と言うのが正直な感想です。
彼らがリリースした5枚のアルバムにも収録されていない、彼らの最初のヒット作「フォールアウト」が、パンクムーブメントの名残の産物だなんて、今まで考えたことすら無かったですからねえ。「アウトランドス・ダ・ムール」のLP版の帯に記されていた、「ホワイト・レゲエ」なんてカテゴライズを真に受けていましたから。
ポリスというバンドは、「ゼニヤッタ・モンダッタ」と「ゴースト・イン・ザマシーン」の間に、ナイジェル・グレイからヒュー・パジャムへの、プロデューサー変更に伴う音楽性の違いが指摘されますが、このソフトを観ると、その音作りの違いが単にプロデューサー変更によるものでなかったことがよくわかります。
「熱帯雨林を救え!」などと(私も支持しますが)、実にエコロジカルな主張で現在も大きな影響力を持つスティングにも、こんな若い時期があったのだな、そして、私も確実に歳をとったのだなあと、しみじみ感じさせてくれた作品であります。
ロックグループの辿る盛衰の軌跡が興味深い
★★★★☆
ポリスがイギリスのパンクムーブメントに便乗して登場してから、スターダムを一直線に駆け上がって行くときの熱狂が手に取るように伝わってくる。
そして、スターになるとともになくなる時間と行動の自由、強まる一方の回りからの期待、それに押し潰されるように心の余裕をなくし、メンバー間で助け合うことができなくなり、エゴをぶつけあい、グループとしてもまとまりがなくなっていく。
アルバムのまとまりが3作目辺りをピークに下がって行ったのはメンバー同士のまとまり具合を反映したものだったということに非常に納得がいった。
頂点を極めた幾多のグループが辿るパターンの一典型例という意味で非常に興味深いDVDであった。
ライブの様子をもう少し見たかった気がするが、それはこのDVDの趣旨とは異なるので言わないことにする。
スチュワートの視点で見たポリスの起承転結
★★★☆☆
The Policeのドラマーだったスチュワート・コープランドが撮り溜めた映像を編集したドキュメンタリー映画である。
なんというか、ファンが見たかったポリスの栄光の軌跡ではなく、スチュワートの視点で見たポリスの起承転結って感じ。
なので、ミュージック・ビデオ世代以降のポリス・ファンが見てもつまんないかもしれない。
「ポリスがどういうバンドだったのか」というのはあまり語られてないのだ。それを知っているという前提で組み立てられているのだ。
若かりし頃の彼らの映像は期待してたほど鮮明にたくさんは入ってなかった。が、やっぱ、若い頃のスティングはかっこいいねぇ。
そしてプライベートショットというわりには、あまりプライベートな素顔は映ってない気がした。強いて言えば、アンディ・サマーズが意外とお茶目だっつーくらいか。
あー、しかし、スチュワート君、おそろしく手が速いですな、ドラムをたたく時の。
万人に勧められる映画ではないと思うが、往年のポリス・ファンだったら見ておいて損はないと思う。ツアーの途上、後ろから撮ったライブ風景、レコーディングの様子などが入っているし。