Wheel of Life
価格: ¥3,244
アート・ブレイキーやマイルス・デイヴィス同様、渡辺貞夫も新しい才能を発見するのが得意だ。学生だった増尾好秋を自身のバンドに抜擢したのもそうだし、デイヴ・グルーシンと組んでヒット作を連発したのもそう。近年はというと、リチャード・ボナとのコラボレーションがめざましい。パット・メセニー・グループで活躍するカメルーン出身のボナはいまや引っ張りだこの人気者だけど、渡辺貞夫は1999年以降ボナと交流を持ち、それによって自身の世界を拡大深化してきた。
これはボナとの共同プロデュースによる2003年のニューヨーク録音。曲はボナが2曲提供している以外はすべて自身のオリジナル。アフロ~ブラジル色を帯びたおおらかなサウンドは、聴く者の心に優しく語りかけてきて感動的だ。そこにはいつもながらの暖かな空気が充満している。なおタイトルは『死ぬ瞬間』の著者でもある有名な精神科医、エリザベス・キューブラー・ロスの自伝『人生は廻る輪のように』から拝借したもの。渡辺貞夫は彼女の自伝を読んで深い感銘を受けたという。(市川正二)