入れ替え戦というものは、なぜこんなにも緊張とそのあとに訪れる興奮を呼び起こすのか。それは、すべてを失い奈落のそこへ突き落とされるという恐怖と、より上質の名誉を求める激情がぶつかり合い爆発するからである。そう思っていた。ところが、胸を借りる側、この本で言えばフロンターレにも、ある種の恐怖は存在した。しかも、恐怖ははじめからあったわけではない… 金子達仁のノンフィクションは本当にすばらしい。まるで自分が登場人物になって、その恐慌を来たしている状況にあるような気にすらさせてくれる。そうすることでわれわれ一サッカーファンはストレスを昇華できるのだ。
…実に劇的――もしシナリオライターが書いたとしたら陳腐としか言わざるを得ない――な形で幕を閉じた’99年の入れ替え戦(現在は行われておらず、’03年復活予定)をぜひ1度味わっていただければと思う。
3人の共著だが、個人的には金子達仁の書いたところ意外はあまり興味を惹かれなかった。もちろん中西哲生といえば当時フロンターレの主将を務めていた男なので一見の価値はあるが。金子にとってはもうひとつの得意分野である日本サッカーの評論もある。いつもの視点とは若干違って非常に新鮮だった。こちらもすばらしい。