本書を読むと、インターネットアプリケーションの多くは、TCPやUDPの特性を利用して作られているということがわかる。たとえば、ポートスキャンのアプリケーションは、Socket通信プログラムの最も基本的な機能で作られている。特定ホストへのポートスキャンならば、20行弱のコードで実現することが可能である。それ以外にWebやゲームなどのインターネットサーバーを作る方法、whoisコマンドの作り方、SSL通信、メールの送受信を自動化する方法、HTMLを解析する方法などが紹介されている。これらのサンプルは、各種機能を実現するために力技で作られた複雑なプログラムではなく、Javaがもつネットワーク機能を利用した、短いサンプルプログラムにすぎない。よって、本書を参考にすれば、手早く自分のアプリケーションにネットワーク機能を組み込むことができるだろう。
本書にはServletの説明は掲載されておらず、同社の『Java Servlet Programming』にてServlet全般が扱われている。しかし、Servletで作ったクラスに本書で紹介されている機能を実装して、ほかのWebサーバー、メールサーバー、携帯電話などの各種ネットワーク端末と連携するようなWebアプリケーションを作る機会は、今後増えていくと思われる。Javaを使ったネットワークの取り扱いについて書かれた辞書として、必携の1冊である。(川藤一真)