この早熟な美しさを持った完成されたシンガーふたりの作品――おぼろげな甘く官能的な揺らぎの中で、そして暖かくあいまいなけだるさの中でくらくらさせるアルバム――はジャンル分けするなら、イージーリスニングのレコード棚の中のストレスを和らげる音楽のコーナーに、両作ともそろって入れられるのはまちがいない。だが、ケイティーをノラと似たようなサウンドとみなすのは、その個性的な力強さと魅力を見逃していることになる。
本作で聴けるのは音楽による心地よい瞑想であり、そのうえオフ・ブロードウェイのミュージカルのような劇的なジャズのスパイスが効いている。また、もの憂いオーケストラをバックに抑揚を効かせた鮮やかな歌声を聴かせる「The Closest Thing to Crazy」「Learnin' the Blues」や、心そそるホンキー・トンク「My Aphrodisiac Is You」で披露しているのは、優しくうっとりさせるような都会的なスタイルであり、薄暗い地下室のイメージとかけ離れたものではない。
まろやかなラウンジナンバー「Blame It on the Moon」、夢見るロマンスにあふれたタイトル曲、魔性のブルースに乗って揺れ動く「Crawling Up a Hill」なども聴かせるこの風変わりで魅力的なコレクションは、彼女が才能ある一人前のアーティストであることを見事に物語っている。(Dan Gennoe, Amazon.co.uk)