ジャズからJ-POPまで、さまざまなジャンルでアレンジャー／コンポーザー／トロンボーン奏者として幅広く活躍する村田陽一らしく、多彩なナンバーを多彩なアレンジと編成で演奏している意欲作だ。

   アントニオ・カルロス・ジョビンの< 1 >「フェリシダージ」はボサノヴァではなくてサンプリングを使ったブレイクビーツだし、キング・クリムゾンの< 2 >「21世紀のスキッツォイド・マン」はブラス中心、ジミ・ヘンドリックスの< 3 >「ストーン・フリー」はファンク。吉田美奈子の< 6 >「時よ」とヴェンチャーズでおなじみの< 7 >「ダイアモンド・ヘッド」は、それぞれ美奈子＆白井良明とデュオ、モンクの< 9 >「ラウンド・ミッドナイト」はクラシック奏者を起用した演奏、ヘンリー・マンシーニの< 12 >「ラムールは貴方のよう」では12本のトロンボーンをフィーチャーしている。さらにミンガスの< 9 >「ラウンド・ミッドナイト」では、ギル・エヴァンス的なアプローチといった具合に、いい意味で好き放題にやっているのが痛快だ。

   アレンジャーとしての才能を最大限発揮した作品だが、同時にトロンボーン奏者としての村田も魅力的。アレンジによって曲の印象がガラリと変わるのが楽しい。才気煥発ぶりをいかんなく発揮した痛快作といっていいだろう。（市川正二）