ダーク・ホース時代で1枚だけ選べと言われたら、僕は迷わず本作を差し出すだろう。ビートルズ解散後に発表した『オール・シングス・マスト・パス』は確かにジョージの最高傑作だが、フィル・スペクターがもたらしたサウンドの貢献度も大きかった。それに比べ、本作はアーティスト=ジョージ・ハリスンの“素”の魅力にあふれていて、それだけに余計愛着がわく。
ポップな佳曲「愛はすべての人に」、ビートルズ時代に作った曲という「ノット・ギルティ」、タイトルからしてかつての名曲を彷彿とさせる「ヒア・カムズ・ザ・ムーン」、トロピカルな味付けを施した美しいナンバー「ダーク・スウィート・レディ」など、ついつい何度も聴き返したくなる粒ぞろいの楽曲が並んでいる。(木村ユタカ)