今日のように製品やサービスが市場にあふれかえっている状況では、自社製品を差別化するための「ブランド」がマーケティング戦略上、重要な意味を持っている。なぜなら企業はブランドを構築することで、自社の製品・サービスを際立たせ、かつ顧客のロイヤリティを得ることができるからである。本書では、どうすればブランドを構築することができるのか、そして構築した後にブランドの効果を測定・管理するにはどのような手段をとればいいのか、各企業の事例を交えながら解説している。
ブランド構築に関しては、「記憶可能性」「意味性」「移転可能性」「適合可能性」「防御可能性」の5つのブランド要素の選択基準について説明した後、ブランド・ネーム、ロゴとシンボル、キャラクター、スローガン、パッケージなどをどうやって導入すればいいのかが述べられている。
ブランド・エクイティの測定に関しては、8章で各種の調査手法が紹介され、9章でさらに具体的に調査の実施方法や測定結果のサンプルが示されている。マーケターにとっては自社ブランドのコストパフォーマンスの測定法がわかると同時に、雑誌や新聞でときおり公表されるブランド価値や認知度がどのように算出されているかがわかるので、参考になる。
本書の最後は、ブランド管理と本書で学んだ知識をさまざまな産業に生かす方法について論じられている。特に12章の「新製品の導入とネーミング、およびブランド拡張」では、新製品・サービスに既存のブランド力をどう生かしていくかという点にスポットが当てられており、興味深い。
マーケティングにおいてブランドの視点を欠くと、致命的なミスにつながることがある。特に「All or Nothing」のネットビジネスにおいては、ブランドの持つ意味は大きい。マーケターとしての視野を広げるためにも、ぜひ本書を読むことをおすすめしたい。(土井英司)