Live Inside Job [DVD] [Import]
価格: ¥1,836
ドン・ヘンリーとイーグルスは、膨大な数のアルバムを売り上げ、いくつかの印象的な曲を書き、コカインに彩られた70年代を代表するアーティストにのし上がった。しかし、これらの業績が1つぐらい欠けても、偉大なライヴ・バンドであるという事実は揺るがないだろう――もちろん、ここで言う「偉大なライヴ・バンド」とは、楽曲を音符1つに至るまで録音時と同じに再現して見せるバンドという意味ではない。ソロ・アーティストとしてのヘンリーにも同じ事が言えそうだ。少なくとも、本作『Live: Inside Job』を見る限りでは。
初めに言っておくが、このショーの出来は悪くない。むしろ、その反対だ。ヘンリーは実にいい声と優秀なバンドを持っている。演奏曲目も魅力的で、アルバム『Inside Job』(80年代以来となる新曲で構成されたヘンリーのファースト)からの5曲のほか、ソロ・ヒット数曲、そしてやっぱり外せないイーグルス・ナンバーが登場。ヘンリーが生真面目なアーティストであることは明白だ。その生真面目さは、ユーモアのなさとなって現れる。ヘンリーの持ち味は毒舌にあるのだ。「Dirty Laundry」、「New York Minute」、「They're Not Here, They're Not Coming」といったシニカルなチューンは、セレブであることの苦しみ、世間にはびこる腐敗、現代カルチャーの空疎さを静かに見つめた内容となっている。そんな彼の事だから、音楽こそがすべてだ、と主張してきたとしても不思議ではない。衣装替えや火薬の爆発を期待しているのならシェールとかキッスを見に行け、というわけだ。立派な姿勢と言うべきだろうが、刺激的なビデオ鑑賞には寄与していない。ここにあるのは、カメラが捕らえたコンサート。ただそれだけの作品なのだ。
とはいえ、多少は意外性もある。中でも特筆すべきは、アフロ・キューバ的な疾走感あふれるアレンジを施された「Hotel California」、12人編成の聖歌隊(リーダーはマキシン・ウォーターズ)が荘厳な雰囲気をかもし出す「The Heart of the Matter」だ。聖歌隊の起用は適切だったと言えるだろう。何しろ本作におけるヘンリーは、(聖歌隊に属するような)すでに改宗した人々に向かって説教を垂れようとしているのだから。(Sam Graham, Amazon.com)