スーパー・ファーリー・アニマルズの呪文のかかった6枚目のスタジオアルバム『Phantom Power』は、最初から最後まで、得体の知れない霊でもいるような不気味なムードに満ちている。死、病、聖戦などの重いテーマに取り組んだこのアルバムは、紛れもなく暗い時期につくられた作品だ。しかしラッキーなことに、このバンドには死刑執行人の手を押しとどめるだけの明るさがある。音楽的には、これは強い光が暗いテーマを追いやってしまうアルバムであり、セミアコースティックのバラードやけばけばしいグラムロックは闇など寄せつけない。たとえばビートルズ風の曲を、フリーク・パワーのスタイルでグリフ・リスが意気揚揚と歌ってみせる「Hello sunshine」はこうだ。「I'm a minger/You're minger too/So come on mingers/ I want to ming with you.」
本アルバムには、驚くほど暗い曲も入っている。「Out of Control」は、ストゥージスに通じる拷問部屋のような雰囲気に満ちている、かつてない陰鬱(いんうつ)な仕上がりだ。しかし全体的には、とても遊び心に満ちている。テンポのいいグラムソング「Golden Retriever」では、リスが昔のブルースマンの言語を今風にゆがめてみせる。また「Slow Life」のような曲では、キアン・キアランのキーボードの音が、以前よりも光っている。確かにごちゃごちゃなアルバムだ。でもそれは、ビートルズの『White Album』のようにまとまっている。不幸をものともせずに。(Louis Pattison, Amazon.co.uk)