19世紀パリ市民の熱狂を追体験
★★★★★
運動会の徒競走では定番の「フレンチ・カンカン」、まず知らない日本人はいないであろうけれども
浅草オペラも遠い昔となった今では、全曲、まして実際の舞台を見た人は数少ないのでは。
特にオペレッタはレコードで音だけ聴いていても魅力は半減どころか9割方減少してしまうので
デセイ以下の魅力的なキャストを揃えたこのDVDは絶対のお薦め。
顔をしかめて交響曲を聴くのが大好きな日本のクラシックファンからは泡沫作曲家扱いされるオッフェンバックですが、
聴いていてこんなに楽しく陽気な気分にさせてくれる「クラシック」の作曲家も少ないのではないでしょうか。
シャンゼリゼのモーツァルトという通り名もうなずけるけれど、溢れる旋律からはむしろロッシーニに近いものを感じます。
歌手陣はそろって演技も確かで、オペラとは違うオペレッタの楽しみが伝わってくるDVD。
ただ、地獄が舞台である以上やむをえないのかもしれないが、舞台装置が全体的に簡素で薄暗いのが
コミカルな演技と合っていなくて違和感あり。
演出は凡庸でいいからMETやブロードウェイ式のゴージャスな舞台で見てみたかった気もします。