本書でいうミイラの定義が、「人間や動物の保存された死体」とするので、登場するミイラたちが、自然・人為を問わず多彩なのも本書の特徴だと思いますが、やはり、エジプトのミイラが紙面の三分の二近くを占めるのも無理はないかと感じます。
ミイラを粉末状にしたものが、茶色の絵の具の材料や秘薬として使われていたり、ミイラの首が骨董品として19世紀にヨーロッパの家庭で飾れていたりと、「へぇ~」な知識も面白いのですが、『ミイラの秘密を解く』の項目で、ラムセス二世のミイラが現代科学の手で分析された結果、威厳ある鼻の高さを保つため、鼻に胡椒を詰めて動物の骨で支えていたという発見や、病歴までも分かってしまうのには興味深いものがありました。
「ツタンカーメンの呪い」としてファラオの墓をあばく冒涜に対して、本書が、「ファラオの願いは、その名が永遠に生き残ることであった。墓が発見されたことでツタンカーメンがどれだけ有名になったかを考えればツタンカーメンは喜びこそすれ、怒る理由はない」とするのは、ある意味、呪いよりも凄いかもしれません。