新しくもあり、古くもある
★★★★☆
博識で海外経験もある著者が現代的な観点から茶道を見直していて、茶道について門外漢の私にも新鮮な驚きがあった。専門用語などには脚注が施されていたりと、初心者にも気配りの行き届いた仕上がりである。これ一冊でも、茶道の世界をかなり深く知ることができる。しかし、著者自身が「宗心」という茶名を持つ茶人で、文章ももともと茶道誌に連載されたものとあって、やはり伝統の肯定が底流にあるようだ。外の者からはやや我田引水に感じられる面もあるだろう。特に気になるのは、教育論に関連して「個性と型」を論じている部分である。個性は徹底した模倣、つまり《型》の習得があってこそ成立するという考えである。欧米にも厳しい教養教育があってはじめて独創性が育まれているというのだが、この辺の比較ははたして妥当であるかどうか。欧米の《古典》は、それ自体、批判検討される中で形成されてきた人文主義的なものだ。教養教育においても、単なる解釈や暗記ではなくて、学生たちが自らの頭で考え、コメントすることも求めるという教授法が根付いている。そうして若い世代によって《古典》が再生産される。これは、茶道などの伝統文化の《型》の踏襲とは同列に語れないもののように思う。教育に《型》も重要なことは理解できるにしても、その意義はより広い観点から慎重に語られるべきであろう。