茶道的心理学と文化表象
★★★★☆
日本文化としての各表象に通底する精神は、身体論の結果的な収束であるとも言える。その一様として、飲食行為の根本にある食文化から見出すことが出来るのであり、嗜好食品と人々との相互関係として理解される「茶道」を典型的に提示できるのである。まさにそこには、飲食行為に留まらない身体技巧、行儀作法や文化的な権威性が含まれている。本書は、日本文化表象を茶道の観点から捉え、身体と精神との間隙に茶道が齎す効果を示唆するものである。そして、茶道に向かう人間の有様を理解しようという試みに対して、心理学を方法論として用いているのである。その方法は有用である。つまり粋の文化、寂びの文化、これらを前にした人間の存在を内面から理解するといった新たな視点を提供としているのである。また、詳細な心理学理論と共に、哲学、西欧文化表象の知識を織り込むことで、本書題名を超えた、学際的文化論の著作となっている。簡易に作法や歴史的経緯を説いた書物とは異なり、あくまで茶道理解のための心理学であり、日本人心理理解のための「茶道学」であり、その両義性を認識しつつ我々は読み進める必要があるだろう。