t.A.T.u. ~デラックス・エディション
価格: ¥3,360
ロシア出身のレズビアン風の美少女カップル、タトゥー。まだ十代のふたりが歌うことになったのはたまたまだろうか? どうもポップミュージックとしての将来性を買ってというよりマーケティング戦略の成果のように思える。そんなふたりの英語デビューにクエスチョン・マークがつくのも無理もない。タトゥーの才能がいつ発揮され、どこまで続くかは未知数だし、仕掛け人たちやプロデューサーのトレヴァー・ホーンが本作にどのくらいかかわっているかは知るよしもないが、おそらくターゲット層となる人々はそんなことに関心はないだろう。
エレクトロポップ界の伊達男ペット・ショップ・ボーイズやフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドを手がけたホーンによるバックサウンドは明快でわかりやすく、疾走するシンセサイザーをクッションに、レーナ・カティーナとユーリャ・ヴォルコヴァの軽快なボーカルを乗せている。ウィンクで人を誘うような歌詞は、女の子が女の子を好きになることをはっきりと歌っているが、ふたりは元気一杯というよりはにかんでいる。はつらつとしたコーラスが飛び交う「All the Things She Said」は性の平等を主張しているようだ。また、通常ヴァージョンとロングヴァージョンが収録された「Show Me Love」はクラブ受けを狙った重厚なダンスフロア・ナンバーである。
けれども、本作で最高のナンバーと言えば、ザ・スミスの「How Soon Is Now」の思いがけない皮肉なカヴァーだ。孤独と絶望を歌ったナンバーを陽気なデュエットに完全に作り変えたこのカヴァーは、どう考えても本作で最も画期的なナンバーと言えるかもしれない。(Kim Hughes, Amazon.com)