オバマ大統領の人気は日本でも高く、特にその演説の巧みさには定評がある。実際、次から次へと彼の演説を扱った英語教材が出版されて、多少辟易している人も多いかと思うが、オバマの演説、特に就任演説以降の演説は格調の高い表現が多く、文法的にも語法的にも洗練されており、ミーハー気分で手にとってみてもなかなか正確に理解するのは難しいと考えられる。実際、就任演説直後に大手新聞社が発表した翻訳は誤訳だらけであったし、次々に発売されている語学教材の翻訳でも細かく見れば間違いが結構あったりする。本書は比較的レベルの高い彼の就任演説を最初から最後まで語学的に詳細に解説しており、いわば大統領演説を教材とした大学受験の読解参考書のような仕上がりとなっている。細かいところまで納得のいく説明が得られるので、英語がそこまで得意ではない読者でもオバマの言葉を正確に理解できるという利点がある。また、CDやDVDなどの付録はないが、著者も指摘するとおり、現代ではYouTubeなどで映像や音声が容易に手に入るのだから、そういうものをつけて値段を無駄に高くするよりは解説のほうを詳しくしたというのも正しい判断だと思われる。

二週間ほど前にオバマはカイロでもスピーチを行ったが、この時もコーランを含めた聖典からの引用がなされ、洗練された表現が数多く用いられ、彼の演説の格調の高さが垣間見られた。55分に及ぶスピーチを全解説するとなると大変かもしれないが、カイロスピーチについても同様の解説書を出されるといいかもしれない。