学者および学者志望者の必読本。恐るべし東大の底力
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この世には「東大マニア」というのが居て、彼ら(彼女ら)は、東大と自分との間に何の接点もないのに、東大関連の資料や品物を収集することを趣味としているらしい。本書が話題になったのも、単に勉強ができる人のノートを公開するだけのために「東大」を冠した本と同様、東大がキーワードであったことは疑いを容れない。しかし、これは決してそんなチャチな本ではない。学術英語を習得する必要に駆られた人たちにとって本書の出版は、真にepoch-makingな「事件」であったと言ってよい。
冒頭で「受験参考書ではありません」と断ってあるとおり、本書は受験用の単語集ではない。東大教養学部での英語教科書を原典としており、読者対象は、東大に合格できる程度の英語力をもった人、そして、将来、学術英語を操る必要がある人、である。それ以外の人はまったくお呼びではない。「オレ高校時代ちょっと英語は得意だったんだ」程度の英語力で興味本位に手にとっても、本書の意図は到底理解できないだろう。また、英会話力の訓練にもならない。本書は純粋に、論文を読み、書くためだけの本である。繰り返すが、それ以外の用途には使えないから、関係ない人は手に取るべきでなく、したり顔で難易度その他を云々するのは笑止である。
日常的に英語論文を扱い、「意味がわかる」ことと「使える」こととがまったく別物であることを知っている人なら、本書の単語が如何に精選されたものであるかを身にしみて理解するだろう。そして過不足のない解説の的確さ、例文の質の高さ。驚異の本と言ってよい。とりわけ若い世代の学者および学者候補生には必読の本である。そして、熟読すべき本である。
英語のプレゼンテーション、レポートのために
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本書は東大教養学部の英語部会が編集したものだが、「この単語を知っていれば東大に入れますよ」という趣旨の単語集ではない。東大の新入生の語彙力を、英語のプレゼンやレポートを作成できるまでにどう成長させていくかという観点に立って作られたものである。
大学に入るまでは英語が得意だったが、大学を卒業しても英語でプレゼンテーションひとつできないという人は案外多いと思うが、本書はその間に必要なトレーニングのノウハウを教えてくれる。選ばれた280語(僅か!)は論理的な英文を構成する上で最重要な、しかし大学入学レベルではなかなか使いこなせないものばかりで、これから英語圏の大学へ留学を考えている人や就職して英語が必要になる人には、貴重な一冊となるはずだ。
ただし注意しなければならないのは、本書の前提には東大新入生の、あるいは英語の得意な大学生の基礎的な語彙力があるということであって、その前段階の、たとえば大学受験生には、本書は必ずしもお薦めしない。
本書の半年後に都内の有名塾が鉄緑会東大英単語熟語 鉄壁という単語集を出しているが、東大入試に必要な語彙力を最低限の時間で習得するためのノウハウを求めるなら、そちらを選ぶのが正解だろう。
星二つが妥当か
★★☆☆☆
やや期待して注文したが、いささか期待はずれだと言わざるを得ない。
本書は本来大学での授業用にとどめておくべき性質の「テキスト」であって、一般の英語学習者向けに市販するには不向きな内容だと感じる。というのも、説明が不親切過ぎるのである。作り手の熱意が伝わってこない。
280の見出し語には英英辞典の定義が掲載されている。これ自体は良いが、定義には説明がない。例文は決してわかりやすくないものもあるのに意訳のみで解説がない。説明が不要な学習者が対象ならそれでもよかろうが、一般の英語学習者ではそうはいかない。
それから、1800円という定価を考えれば、本文の単語、英英定義、例題を吹き込んだCDは付属させてほしかった。
本書は英語教員が授業で解説しながら使用するテキストを、「東大英単語」という世間受けしそうな表題を付けてヒットを狙ったと言えば意地悪過ぎるだろうか。
何を期待するか部外者よ
★☆☆☆☆
この英単語帳は、東大教養学部の必修科目「英語一列」で使用される教科書"On Campus"に出てくる重要単語280を抜き出し、章別に並べ、解説した本です。
なお、昨年までは"A Handbook of Academic Vocabulary"という、大判の冊子が700円くらいで販売されていました。もっと簡素でしたが。
そもそもの目的が「東大1年生の勉強の手助け」なので、それ以外の利用法はあまり、ありません。
全国販売したのはまあ、ある程度の売れ行きを期待するからでしょうが・・
だから英語使って働いている人が出てきて偉そうに「全部知っている」だの、
また別の人が「発信力をつけるなら」だの「英英辞典の方が」だの、的外れもいいところでしょう。
この単語帳の本当の価値は東大生、それも駒場生にしか分かりませんよ。
ちなみにこの本に対する私の評価は、上の星の示す通りです。
中級英語で買わされたけど、無駄だった。残念。
東大教養学部英語部会の恥の上塗り
★☆☆☆☆
東大教養学部英語部会はUniversal of English以降,ご自慢の英語教材を出版することで,大学における英語教育の第一人者を自称している。しかし,教材が優れていても教員がそれを扱うだけの能力がないか,或いはペダンティックに過ぎるか,はたまた内容が陳腐かのいずれかで,成功と言って良いものはないように思える。本書もその流れをくむもので,まさしく東大教養学部英語部会の恥の上塗りと言わざるを得ない。ある程度英語が出来る人ならば,このような単語は「英語のまま」理解するもので,そのために英英辞典があるにもかかわらず,もったいぶって単語帳として出版する意義が全く分からない。