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Metaphysics as a Guide to Morals

価格: ¥1,900
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: Vintage Classics
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マードック小説のファンの皆さん、愛の力で読んでみませんか ★★★★★
ジョン・ベイリー(マードックの夫)によると、アイリス・マードック(1919〜1999)は小説執筆においては苦労の片鱗も見せない人だったそうな。物語創造力にかけてはそういうバケモノのマードックが、本書執筆中に行われたらしいインタビューで「哲学は小説を書くより難しい」と繰り返していたのを覚えています。本人が難しいと言うのだから読むにもかなり難解な本です、って哲学書なのだから当たり前なんですが。
多分マードックがここで試みているのは、「倫理哲学は可能である」という証明ではなかろうかと思います。19世紀から20世紀の様々な思想潮流(実証主義、実存主義、マルクス主義、ポストモダン相対主義、フロイト、ダーウィンetc)によって解体寸前に追い込まれた「倫理」の防衛戦を、プラトン哲学を武器に展開しているのではなかろうか(よく分からないが)。その戦いを哲学的手続きをもってやっているから素人には難解極まりないのですが、ウィトゲンシュタインが語らぬことによって守ろうとした倫理領域を、マードックは語ることによって守ろうとしている、というのはあくまで無責任な印象ですが。カントの有効性、ニーチェの悪魔性などについては刺激的ながらいまひとつ分からず、マルクスとフロイトの相似性などはナルホドと興奮して読んだのに数日後には頭の中から理解が霧散し、デリダやフッサールに至っては睡魔に襲われた記憶しかありません。しかしいまになって遅まきながら、この防衛戦を是非とも敢行しなければならない、という切迫感が当時のマードックにはあったのだろうなぁ、と感慨深い。
大思想の骨格となると手に負えないにしても、マードックが語る芸術論、文学論(喜劇論、悲劇論etc)、宗教と政治、さらりと挟まれる大哲学者たちに対する忌憚のない寸評など、素人にもかなり面白く読める部分はたくさんあります。全体像に食らいつくのは素人には所詮ムリだと諦めて、そういった箇所に取っ掛かりを見つけて読み進むのもそれなりの読書体験ではないかなと思ひます。