「私はローマに滞在した。ひかりにずぶ濡れになって」、そんな風にローマを見たかった、この窓から
★★★★☆
名詩名訳。ロシア語原文との二言語版詩集です。ロシア語が読める人ならいっそう楽しめたにちがいないけれど、日本語部分だけでも言葉の戦慄をじゅうぶんに味わえると思います。ゲーテの「ローマ悲歌」を高く評価する詩人が、16行詩12編でそれに答えてみせた小詩集。北国の人間の、南国に対する焦げるほどの熱情が、どの行からもほとばしっています。「おお、鳶色の眼がなんなく吸い込んでいるではないか/これまた鳶色の家具を、ブラインドを、柘榴の実を。/紺碧の眼よりもその眼はもっと鋭く、その眼はもっとやさしい。/とはいえ紺碧の眼にはどうでもよいこと!/紺碧の眼はいつでもその持ち主を識別できよう/かわるがわる捨てられる日用品から/(すなわち、時間を、その生きざまから)、相手をじっと見つめるために。」素朴と洗練を一身にかねそなえた叙情がこんな風に成り立つことを、改めて見せられ、新鮮な気持ちになりました。作者ブロツキー自身による英訳も入手して読んでみたいと思います。