家路 [DVD]
価格: ¥4,935
監督のマノエル・デ・オリヴェイラが、本作を撮影したのは92歳。主人公は突然の交通事故で妻と娘夫婦を亡くしたベテラン俳優で、遺された孫との生活を軸に、彼の孤独な日常が淡々とつづられていく。
プライドが高く、ギャラのいいドラマへの出演を拒む主人公だが、撮影の本番で台詞が出てこないなどシビアな現実が観る者の心に鋭く突き刺さる。人生の哀感をしみじみと伝えるのはもちろんだが、オリヴェイラの映画的手法には全く老いが感じられない。主人公が見つめる絵からショパンのワルツへの転換など、映像と音楽がたがいに呼吸を合わせているようだし、彼の心情を靴のアップで語らせる場面などが秀逸。カフェをはじめとしたパリの街並みも静かなたたずまいを見せ、映画の雰囲気にマッチしている。映画監督役ジョン・マルコヴィッチの、役柄をわきまえた控え目な演技も好感。(斉藤博昭)