ピカード艦長の手記として書かれているため、紹介される内容は「艦長の視点から見た」エピソードとなっている。そしてそこから指導者の資質として9つの能力を挙げ、それぞれについてエピソードを交えながら、指揮官としての判断基準を指し示していく。予備知識がなくとも興味深く読めるが、該当するエピソードを知っていれば、さらに楽しめることは間違いない。各章末には訳者によって、どのエピソードがもとになっているかが丁寧に解説されている。
それぞれのエピソードから示される教訓は特別なことを語っているわけではなく、うっかりビジネス書として読むと肩透かしを食らってしまうかもしれないが、著者らがピカード艦長になりきって自らの経験を述懐する姿は微笑ましい。ピカード艦長のキャラクターを知るファンであれば、いかにも彼が語りそうなその内容にニヤリとすることだろう。ファンにはマストアイテムと言える。(大脇太一)