スポックという当たり役に単純に喜んでいたニモイが、次第にそれに振り回されるようになり、悩みながらも、「スポックの役の人」にとどまらない「俳優レナード・ニモイ」として幅広く成長しようとし続ける。その過程が慎ましやかでユーモアのある文章で語られている。
いわゆる“ハリウッドの暴露本”的な刺激はないが、ひとりの役者の内面を語る本として非常に興味深く読むことができる。ウィリアム・シャトナー、ジーン・ロッデンベリーなど他の関係者との時には笑え、時にはぎょっとする小さなエピソードや、随所に挿入されるスポックとニモイ自身のかけ合いも面白い。
ちなみに、ニモイはこの作品の前に『わたしはスポックではない』という自伝を書き、ファンの間で物議をかもしたという。こちらは未訳のようだが、一体どんなものなのか併せて読んでみたい。