障害者側から見た非障害者中心社会
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1926年に生まれ、転職・放浪後、諸団体・施設を訪ね歩いて障害者向けの多くのラジオ番組を制作した、町田市在住の著者が、障害者の現状についての具体的で基礎的な知識の提供のために、1988年に刊行した新書本。第一章では、「障害(碍)者」の範囲が福祉レベルに応じて国ごとに異なること、「障害」が社会とのかかわり(都市構造・社会意識ゆえの不便、医学、公害、産業構造変化、高齢化等)の中から生じてくること、障害(多様!)の有無で人類を二分せずに、非障害者でも何らかの援助を必要とする人々がいると考える必要が述べられる(『五体不満足』と共通)。第二章では、障害者施設建設反対の住民運動の事例を検討し、警戒する必要があるのは反対よりも無関心の方だと結論づける。第三・四・七章では、戦後の障害者運動が1960年代前半までの「障害者の為の」諸団体設立と養護学校・収容施設設立「請願」、1970年代の「権利意識」に基づく「障害者と共に生きる」生活圏拡大運動・統合教育運動、1980年代の障害者自身の自己表現による自立生活運動、「生活の質」への注目、国際的組織づくりに大まかに時期区分される(1990年代はこの延長線上か)。第五・六章では働く場の問題が扱われ、企業での雇用の未発達、授産施設と異なる作業所独自の多様な意義が紹介される(ワークシェアリングや特産品開発等を扱う部分は経済論としても重要)。第八章では脱施設化とノーマリゼーション(暮らしのリズム、選択の自由、所得の保障)がグループホームの事例をもとに論じられ、また女性障害者への二重差別も問題とされる。第九章ではボランティアについて、難しく考えずにまず活動すること、その際障害者を保護対象ではなく仲間と考えること、障害者には断る自由もあることが論じられ、障害者「による」ボランティアの事例も紹介される。福祉施設に勤める親友から聞いた事実を体系的に確認できた。