「祭り」がテーマの土俗的短編集
★★★★★
土佐を舞台にした、土俗色の強い5篇を収める短編集。テーマは祭りということでしょうか。
「隠れ山」に対する評価が高いようですが、私は4作目の「紙の町」が印象深かったです。これまで読んだ坂東作品の中では唯一、軽度知的障害者を主人公にして、世界を眺めています。その心理描写など、並の作家にできることではありません。
幻想的な結末も、味わい深いです。…まあエロスも入っていますが。
濃厚な世界観
★★★★★
5編の短編小説集ですが、いずれも人間の業や宿命といったものが濃密に描かれており独特な世界観を堪能することができたと思います。読み終えた後、不思議な余韻が残る作品が多かったと思います。
幻想的な雰囲気が漂う表題作「神祭」、濃密な性描写と切ない読後感が印象に残る作品「火鳥」などいずれの作品も小説としての完成度が高く、人間の内面の深い部分が掘り下げて描かれており、秀逸だと思います。
現代版「遠野物語」?
★★★☆☆
5編中,「隠れ山」が好き。
平凡な公務員だった定一が,ある日突然失踪する。定一は,山に隠れて,会う人に対し,嘘ではないけれども本当でもない与太話をするようになった・・・。不思議な設定のまま迎えるアンチ・クライマックスが,どことなく,現代版「遠野物語」のような不思議な余韻を残す,不思議な作品だった。
ちょっと・・・
★☆☆☆☆
「死国」などの流れで買ったものの・・・・人間社会の後ろ暗い部分がどんよーりと浮き上がって、「ほんのり」と人間の「業」を感じる作品ではあるけれど、ホラー好きには、ものすごく物足りなかったです。「桃色浄土」の方はまだ数倍良かったような気もします。
短編では難しい世界
★★☆☆☆
坂東真砂子お得意の、四国の土俗的世界を舞台にした短編小説集である。5編の短編が収録されているが、どの作品も今一つインパクトに欠けるし、余韻の残るような終わり方もしていない。5編とも40ページほどの作品なのだが、たったそれだけの中で、土俗的世界を魅力的に描き出すのは、無理なのではないかと思う。もっと肉付けすれば良くなったと思われる作品が含まれていただけに、とても残念である。