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死国 (角川文庫)

価格: ¥620
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川書店
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人物設定・物語の構成力共に不充分〜「何のこっちゃ」と言う印象 ★★☆☆☆
読み始めて、「死国」が「四国」の駄洒落だと気付いた。四国の矢狗村出身のイラストレータ比奈子が里帰りした際に、村を襲った霊的異変を描いた作品。だが、道具立てがありきたり。死者を祭っていると言う禁忌の地「神の谷」。死者を甦えらせる力がある様だが、S.キング「ペットセメタリー」と同工異曲。お遍路コースの逆回りである「逆打ち」の風習もこの一環だろう。「死の国と甦り」がテーマの作品と言う事が分かる。

比奈子の帰郷理由が東京の恋人との不和とは興醒め。同窓会で、初恋の人文也と再会するのも型に嵌り過ぎている。また、村人達の土着性が感じられず、到って健康な明るい農村を描いている様である。理由もなく、比奈子が白眼視される等の工夫が欲しい所。比奈子自身が霊性を持つ女としても良かった。そして、代々村の巫女を務める家の娘で小学生の時の親友だった沙代子が、中学生の時に亡くなった事を聞かされるのがやっと本筋。沙代子の母照子が「沙代子が生き返った」と称するのは「神の谷」と「逆打ち」のお蔭だろうが、冒頭の通り新規性は感じられない。比奈子の感じる恐怖感も、沙代子の幻影・幻聴のみで、しかもそれを文也と共有しているので、孤立感が無く切迫感にも欠ける。文也や東京の恋人は不要だったと思う。作品に卑俗な印象を与えただけである。もっと、比奈子を窮地に追い詰める必要があったのではないか。

シゲや遍路直朗の造形を初めとする人物設定が上手く出来ていない上に、後半1/5程度から唐突に「生と死が交錯した世界」に入ると言う無茶な構成で、読む者の興趣を殺ぐ。「四国」は「死霊の国」と地の文で繰り返すだけで、雰囲気が盛り上がると思ったら大間違い。人物設定や物語の構成力でそれを示すのが作家の力量だろう。結局は、比奈子の心の再生の物語にしかなっておらず、「何のこっちゃ」と言う印象を受けた。
四国の古代伝承が現代によみがえる ★★★★★
 例によって、ラブストーリーと伝奇物語が平行しつつ破滅的な結末に向かうという、坂東作品ならではの構成です。四国という島の出自から端を発して、石鎚山と「死の谷」(こちらは作者の創作と思われますが)を対極として、生者と死者、そしてその間にある人たちの間で綱引きが展開されます。
 思いを寄せる同級生に何も伝えられないまま、大人になる前に他界した少女の怨念が、神秘的な「死の谷」に漂います。その相手が、池の中に石柱を立ててしまったことから、話はにわかに動き出します。狗神に比べると多少まとまりがなく、ややまったりした進行ですが、スケールは一回り大きくなっています。

 登場人物の心理描写に見え隠れする、都会の生活に憧れながらも地方に住まう若者の心の内が、何やら私には他人事と思われません。
生と死 ★★★☆☆
四国を舞台にした物語です。
四国にまつわる昔話などもあり、
日本の神話や郷土の歴史に興味がある方にはおもしろいと思います。
この本を読んだ後、四国に行くのもよいかもしれません。

内容としては、怖いとは思いませんでした。
どろどろした描写もなく、怖がりの人でも読めると思います。
どちらかというと、生と死が交錯する、人の感情がぶつかりあう、
ということがメインです。
生きている人は変わっていき、死んでいる人は、昔のままの姿で再会する。
「死んだら全て終わりなのか」という死者の質問に、
ちょっと考えさせられました。
死者と生者 ★★★★☆
『死国』のには死者と生者の戦いもテーマになってると思う。
最終的に死者が生者に勝ってしまうような終わり方で
ちょっと後味が悪いのだけど・・・
でも坂東作品にはそういうの多い気がします。
生者として生を全うしたのは日浦康鷹くらいじゃないでしょうか。
今後の比奈子にも期待だけど、文也の霊が見つめているようですね。
文也が莎代里の視線を求めたように、比奈子も文也の視線を求めて
文也と同じように不幸な恋愛して
最期に死んでしまうような暗示を感じるのですが・・・
お遍路さん必読 ★★★★☆
私自身がお遍路中なもので興味深く読ませてもらいました。
多くのお遍路が四国を常に回っていること自体が、
ある大切な意味を持っているという話は
(著者オリジナルの説だとしても)
妙に説得力があります。
「狗神」もそうでしたが、四国の匂いが濃厚な一冊です。