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ブリジット・ジョーンズの日記―きれそうなわたしの12か月 秋冬篇

価格: ¥1,050
カテゴリ: 単行本
ブランド: ソニーマガジンズ
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   ヘレン・フィールディングの『Bridget Jones's Diary』(邦題『ブリジット・ジョーンズの日記』)のファンなら、『Pride and Prejudice』(邦題『自負と偏見』)のひょうきんバージョンでもある前作は、シングルトンのヒロイン、ブリジットがとうとうミスター・ダーシー、つまりマーク・ダーシーをものにしたところで終わったことを覚えているだろう。『Bridget Jones: The Edge of Reason』(邦題ブリジット・ジョーンズの日記―― きれそうなわたしの12か月』)はその4週間後、すでに2人の蜜月が終わったあたりから始まる。左寄りのブリジットは、夢の男性が実は保守党に投票していたことを知ったこともあって、誰かと毎日同じベッド、同じ部屋で過ごすという現実が少しばかりきゅうくつになりはじめる。
男の人が家にいるってことは、実は結構厄介なことだった。落ち着いて好きなだけバスルームにいることもできやしない。だって、相手が仕事に遅れるかも、とか、おしっこを我慢してじたばたしてるかも、なんて思っただけで、バスルームがガス処刑室に変貌しちゃうんだから。それにマークが寝る前に下着をきちんとたたむのにもまいってしまう。自分の脱いだものを床にためて置くだけで、なんだか気がひけてしまう。

   しかし、こんな問題も、美人で、男を引っかけるのが得意で、抜け目なさではとうていかなわない敵、レベッカの登場で影をひそめる。「赤ちゃんのきりんみたいな太もも」をしたレベッカは、人の彼氏をかっさらうためなら、女同士の友情に関して倫理観のかけらもない。間もなくレベッカの陰謀や、ブリジット自身の迷いや、誤解の連続(裸のフィリピン人の男の子がマーク・ダーシーのベッドにいたことから始まり、ブリジットのクリーニング屋がよこした、いわくありげなバレンタイン・カードに終わる)の結果「体重58キロ(よい)、アルコール…ゼロ(素晴らしい)、煙草…5本(喜ばしい健康的な数字)、マーク・ダーシーの家の前を車で通った回数…2回(大変よい)、まだ生きているか確かめるためにマーク・ダーシーの名前を電話帳で探した回数…18回(大変よい)、1471に電話した回数…12回(まあまあ)、マークからの電話の回数…ゼロ(悲劇的)」

   幸いにも、ブリジットは気を紛らしてくれる問題をほかにもたくさん抱えていた。ケニアに行っていた母親は格子模様のマントを着た若いマサイ族を連れ帰って父親を仰天させ、大親友のジュードとシャロンとトムはそろって自らデート地獄にはまり込み、ふざけた大工はアパートの部屋をめちゃめちゃにし、信頼できないもとの彼氏は生活のなかに舞い戻ってくる。あげくの果てに誰かがブリジットに殺しの脅迫状を送りつける。まさか、マーク・ダーシーが?

 『Bridget Jones's Diary』が『Pride and Prejudice』の現代版だとすれば、この続編はいくつかのテーマや仕掛け(節のタイトルのつけ方については言うまでもなく)をやはりオースティンの小説『Persuasion』から借りている。それにオースティンの小説と同じように、この小説も、最後に行きつくまでの道のりこそが目的だ。だからブリジットと仲間たちのハッピーエンドは、なるべくしてなった結果でしかない。とはいえ、どうやってそこへ行き着くかを知ると、読者は大笑いしてイスからずり落ちることだろう。もっとも、前作ですでに笑いくずれてイスから転げ落ちていなければ、の話だが。