現代彫刻史上不滅の名著
★★★★★
まだ若かった著者自身にとっても決定的な転回点となった一冊。二〇世紀彫刻の通史なら前にも後にも類書は多くありますが、読みの大胆さ、発想の豊かさの点で本書を超えるものは未だ出てきていないと断言していいでしょう。美術史にとってのクラウスの功績はしばしば現代思想を効果的に導入した点とされますが、注目したいのは、それが常に実際のモノに向ける執拗なまでの眼差しに裏打ちされていること。時として強引とも思える哲学や文学批評と作品との結び付けが、一見不可解な作品の構造と意味の鮮やかな解明に結びつくさまは、今読んでも胸のすくようなところがあります。