上田、八木思想入門
★★★★★
本書は、日本を代表する宗教学者二人による対談だ。上田は禅とエックハルト、八木は新約聖書学の泰斗であることは、おそらく言う必要はないだろう。
対談は、まず、話題となるテクストが掲げられ、それをめぐってなされる。初めに問題となるテクストが提示されるので、禅あるいは聖書に親しみがない読者にも、なにが問題となっているのかわかりやすい。印象的な文章が紹介されているので、聖書あるいは禅への入門として、本書は役に立つだろう。
しかし本書は、禅や聖書の入門としてはたらくだけではない。上田、八木それぞれは、独創的な研究で知られる宗教学者であり、本書に収められた対談は、かれら二人の研究への導入としても役に立つのである。その意味からすれば、巻末にでも読書案内のようなものがあってよかったように思われる。上田も八木も多産な学者ゆえに、本書を読んでかれらの考えに興味を抱いても、では次に何を読もうかと思った時に、おそらく、途方にくれるだろう。