新版選集第1巻
★★★★★
著者の著作集には『上田閑照集』全11巻がすでにある。そこから「人間とは何か」「宗教とは何か」という問いを軸に選び抜かれた文章からなる新編集版の選集である。文庫とは言え400頁を優に越えるそのボリュームは、読み応えたっぷりと言うほかない。
「我は、我ならずして、我なり」という二重世界内存在としての「我」論、西田哲学と田辺哲学の「宗教」をめぐる絡み合いとその行きつく先、また清沢満之・夏目漱石・山頭火と放哉に見る「人間」…。取り上げられる人々と、その人々を取り上げる著者との、その思想の深みに溺れそうになりつつも、評者もまた、死すべき有限の存在である限りは、そこから逃げるわけにはゆかぬのである。
読了した後も、相変わらず生死について考えている。