帝王マイルス・デイヴィスのグループから独立したジョン・コルトレーンは、マッコイ・タイナー、エルヴィン・ジョーンズという彼にとっての最良のメンバーとカルテットを結成。本盤の録音に臨んだ。
本盤のタイトル曲は、リチャード・ロジャースとオスカー・ハマースタイン2世のミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」の挿入歌。しかし録音された時点では、名作といわれた「映画」はまだ封切られていない。舞台での人気曲ではあっても、この演奏がファンに支持されたのは、3拍子によるジャズの心地よさ、それを叩くドラマーのダイナミックさ、そして何よりもコルトレーンの吹くソプラノ・サックスがこのメロディに非常に良くなじんだからである。コルトレーン自身も気に入り、生涯の愛奏曲となった。晩年にはそれこそ凄まじい演奏になってしまうが、本盤では、かわいらしいメロディを、突き抜けるようなソプラノ・サックスで丁寧(ていねい)に吹いている。そこが人気の秘密であろう。ほかにもガーシュイン、コール・ポーターという大作曲家のスタンダード曲を演奏している人気盤。(高木宏真)
初心者でも、楽しめる。
★★★★★
私はジャズに関しては、本当に何も知らない。ただ、持ち前の好奇心と探究心と冒険心の強さから、この≪ジョン・コルトレーン≫に関しては、CDを20枚くらい集めてしまった。いろいろ聴いたが、後期の前衛路線は楽しめなかった。またスタンダードな『バラード』辺りも平凡だった。個人的に1番好きなのは≪中期コルトレーン≫で、アルバムで言えば『ソウルトレーン』『ブルー・トレイン』、そして、この『マイ・フェイバリット・シングス』辺りである。超POPで聴きやすいのに、大人の風格を感じさせる演奏は、まさに最高です。祝日だというのに休日出勤で疲れたので、今夜はこれを聴いて一人で休みます。変なのと一緒にいるより、一人で音楽でも聴いてる方が、よっぽど気が休まります。
この求道者にはぬかずきたくなるの
★★★★★
1961年にリリースされたトレーンの代表作。ソプラノ・サックスを使用した一曲目はあまりに有名だ。それにしてもすでにこの頃から
宗教的とも言える悟りの雰囲気が漂っているのは何なんだろう?トレーンが創造した音楽に触れるとき、何か物事の真理を追求する
感覚が付随してくるのだ。まさに求道者の姿をそこにみてしまう。。
さてこの一枚。ピアノ奏者にマッコイ、ドラム奏者にエルヴィンとゆう最高のメンバーを迎えての演奏。エルヴィンは基本的にどんな
パターンでも歌える稀有な存在なので文句は出るはずもない。それ以上に素晴らしいマッコイ。私見だが、多分彼の演奏じゃなきゃ
本作は傑作足りえないだろう。とにかく妥協がない。バッキングにムラがないのだ。灼熱を内へ内へと内包し、表面上クリアでクールで
ブリリアントなピアノタッチ。それが〈この時期〉のトレーンと最高に呼応する。表面上は線が細いけど、芯がとにかく強い。鋼鉄の
ようなメロディアス。両者が補う理想形。精神レベルで繋がっていて、お互いがお互いを高め合っているのがよく判る。
一曲目と二曲目でソプラノ・サックスを、三曲目と四曲目でテナー・サックスを楽しめる。私的ベストは三曲目か。マッコイのソロパート
にゾクゾクくるし、後半でみせるバンドのグルーヴが見事だ。
普通に演奏してるだけでも間違いなくジャズ界の巨人なんだが、そこに満足せず自身を高め続けたジョン・コルトレーンの偉大な通過点。
アトランティック時代唯一の汚点?
★★★☆☆
コルトレーンのテナーの逞しくぶ太いトーンが好きだ。カインド・オブ・ブルーからジャイアント・ステップスに続く上り龍のような勢いも凄い。そんなコルトレーンの魅力を集約したのがアトランティック時代だと思う。その頃の8枚のアルバムの中でどうしても「好きになれない」のが、この"MY FAVORITE THINGS"だ。まずいきなりのソプラノサックスに萎える。同じ音階の繰り返しも飽きる。やっぱトレーンはテナーでしょう。オルガンを弾くマイルスに、どこかはぐらかされた感じがして納得できないのと同様だ。トレーンに攻めの姿勢が感じられないのも嫌だ。このサウンドオブミュージックからの童謡はハードボイルドなコルトレーンに似合わない。ディズニー音源の"Someday My Prince Will Come"の二番煎じを狙ったのか?
寛ぎの"Every Time We Say Goodbye"もどこか頼りなく弱々しい。せっかく手に入れたエルヴィン・ジョーンス(ds)、マッコイ・タイナー(P)が勿体ないじゃあ〜りませんか。お次の"Summer Time"の雄叫びでやや持ち直すが、最後の"But Not For Me"は音程が不安定でラフ過ぎる演奏が気に障る。あのシーツ・オブ・サウンドのコルトレーンがジャイアントステップスの後に発表したアルバムがこれじゃ情けない。
コルトレーンで1曲選ぶなら
★★★★★
間違いなくこの”My Favorite Things”だと思います。
僕は正直、コルトレーンはそこまで好きではありません。
後期の余りにも宗教的・求道的なインプロヴィゼーションには
ついていけない部分を感じてしまうからです。
「私のお気に入り」はどこまでもポップなメロディを持ち、
なおかつ心の奥底まで届く深み・音楽的な豊かさがあります。
ビートルズなら「リボルバー」でしょうか、あらゆる要素が
しっくりと噛み合っているのを感じます。
ただ静かに繰り返されるソプラノサックスの主旋律、そして
中盤流れる様に紡がれるマッコイ・タイナーのピアノは、何度
聴いても味わい尽くせない程の美しさ。至福の13分半です。
「ブルートレイン」よりも「至上の愛」よりも、まず皆に
薦めたい一枚です。個人的にライブでの最も良いバージョンは、
レコード”COLTRANOLOGY VOL.1”に収録されているものだと思います。
そちらは本作と同じメンバーで、20分を越える凄まじい演奏です。
コルトレーンのクラリネットも聴け、またピアノの透明感もスタジオ盤
より上です。
そうだ、コルトレーン、聴こう。
★★★★★
コルトレーンは難解で、暗くて、内向的で、権威主義的で、ジャズオタクが持ち上げすぎで、本来ジャズはもっと楽しいもので、、といった多くの批判がありながらも、それでも生き残って、多くの信者を、時代ごとに獲得していくのが、天才と呼ばれるものです。
コルトレーンファンにはもう説明不要のアルバムでしょうが、コルトレーンはちょっと重苦しくて、という人にとっても、各プレイヤーの「My Favorite Things」を較べて聞いてみるのは楽しいと思います。
コルトレーン、ビル・エヴァンズ、ウェス・モンゴメリー、サラ・ヴォーンなど、色々な面々が、本作を解釈しています。それを通して聞いてみると、それぞれ魅力的だし、その中のコルトレーンの面白さというものも、少し感じられると思います。
さらに、「サウンドオブミュージック」そのものや、映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のビョークの歌もありますし、久石譲のJRのCMなどもあわせて聞くと、作曲、編曲、アドリブとは何なのか、一つの曲を通じて、ジャンルを超えた音楽の多様性を体感できると思います。