ポップ・ニヒリズムがその暗い約束をすべてあまりにも規則的に実現していった時代に、パール・ジャムは生き残ったばかりでなく、成功を手にし、最高のロックバンドのひとつとなった。彼らの経歴を振り返ったこの33曲のダブル・ディスクは、90年代初頭のアリーナとラジオでの成功（期待されていたニルヴァーナが誇大宣伝の結果自滅する形になった一方、パール・ジャムはここから一気に大衆の心をつかみ有名になっていこうとしているところだった）から、バンドを21世紀まで導いた、コアなオーディエンスに的をしぼった徹底的な取り組みにいたるまでの流れを記録している。1枚目のディスクにはストーン・ゴッサードとマイク・マクレディがあおるドラマティックで猛烈なハードロック（「Jeremy」（邦題「ジェレミー」）、「Alive」（邦題「アライヴ」）、「Even Flow（邦題「イーヴン・フロウ」）」のような初期の名作や、「Go」（邦題「ゴー」）、「Spin the Black Circle」（邦題「黒き輪を回せ」）などのもっと攻撃的な作品を含む）の記録を年代順にそつなくまとめ、2枚目ではエディ・ヴェダーの考えこむような、たいていは陰気なバラード（「Elderly Woman Behind The Counter In A Small Town」（邦題「エルダリー・ウーマン・ビハインド・ザ・カウンター・イン・ア・スモール・タウン」）や「Yellow Ledbetter」（邦題「イエロー・レッドベター」）、めずらしいオールディーズのカバーでのヒット曲「Last Kiss」（邦題「ラスト・キッス」））にもっと注目し、バンドの幅と音楽の質の高さの両方を強調するコレクションとなっている。主に『バイタロジー』（原題『Vitalogy』）以前のスタジオ時代に集中しており、新しい作品は収録されていないのだが、長年プロデューサーを務め、共同制作者でもあるブレンダン・オブライエンが「Once」（邦題「ワンス」）、「Alive」、「Black」（邦題「ブラック」）のリミックスを提供しているのが、おなじみの曲に新鮮味を与えている。さらに、これまでのアルバムに収録されていなかった「Man of the Hour」（邦題「マン・オブ・ザ・アワー」）と「State of Love and Trust」がアルバム全体のバランスをぐっとよくしている。（Jerry McCulley, Amazon.com）