いつだったかNHKで千住博氏の特集があって、「すごい絵を描く画家だなあ。」という印象がありました。平松礼二氏については、恥ずかしながらあまり知らなかった。時々美術館へ行って、展覧会をのぞいてくる程度の私がこの本について感想を述べるのもなんですが、ページをめくる度に次にどんなことが語られているのだろうと、楽しくてしょうがないといった本でした。お二人の作品についての技術的なことや意図したことはもちろん。東京国立博物館の国宝や東京国立近代美術館の作品へのまなざし、視点がこれから絵画を見るうえでとても役立つと思いました。どんな作品もそれが描かれた当時は時代の最先端を行く斬新なものであったこと。世間に衝撃を与え優れたもののみが今日に残っている。そう考えると日本画の中には日本人が格闘し、手にした技術やアイデアが集積されているのではないでしょうか。
画家を志すものはもちろん、何かを創造しようと日夜努力している人にはお勧めの本です。また、グローバル社会、バブルの崩壊、9,11テロ以後といった形容がなされる現代社会、日本社会の本質はなにか。現代を流れる時間、歴史はどのように表現するのが良いのか。多くのエコノミストや評論家の言葉よりも、両氏が世界を意識して語った日本画、美、歴史についての言葉のほうがリアルで説得力があると思います。