また教義についても、一般の通史では、「キリスト教、ゾロアスター教、仏教の折衷宗教」という簡単な説明で終わってしまっていて、なにかいかがわしさ、いいかげんさだけしか感じられなかったのですが、本人の著作や弟子たちの著作・活動などがよく残り、知られていることから、当初のマニ教に対する不気味さ、うさんくささ、というものが、いつのまにか感じられなくなりました。
ところで、少し難点を挙げるとすれば、著者がフランス人であることから、訳者達は、イラン史は専門外のフランス文学関係者となってしまい、一部訳語が、日本で一般化している訳語とはならない用語があった点と、マニの生涯について、前半生は、出典もきちんと併記されているのですが、生涯の後半については、記載されていない部分が目立った点が、残念といえば、残念な点でした。リプロボートからでている山本由美子著「マニ教とゾロアスター教」と合わせて利用すると、より効果的かど思います。