荒唐無稽の大風呂敷という点で、このシリーズは伝奇小説の伝統にのっとった傑作となる要素を秘めた作品である、と文庫版の１巻を読んだ当時は思ったのですが、この２巻を読んでみて印象が変わりました。

１巻はいわば顔見世でしたが、柳生十兵衛、宮本武蔵、天草四郎など、山田風太郎作品に代表される時代物の伝奇小説で頻繁に取り上げられるキャラクターの中に、万源九郎という魅力的な主役を配したことで、同じ時代を扱った傑作｢魔界転生｣を超える作品になるのではとの期待を抱かせました。しかし、２巻でさらに大風呂敷を広げた結果、かえって内容が希薄になり、良質な伝奇小説の持つ、それこそ読者の首根っこを掴んで離さない濃密さが作品から失われました。おかげで、２巻を読み終えた後はやく３巻を読みたいという気持ちはもうほとんどありません。

魅力的なキャラクター、時代設定など、夢枕獏さんの実力があれば伝奇小説の歴史的傑作となる要素があっただけに、大風呂敷を広げすぎたことで作品の質を落としてしまったことが悔やまれます。

黒人を父に持ち
｢まけどにあ｣国王の大剣を背負った
巨躯の剣士万｢源九郎(よろずげんくろう)｣

豊臣秀頼の血を引く謎の娘｢舞｣
｢宮本武蔵｣と｢巌流佐々木小次郎｣
伴天連の妖術使い｢天草四郎時貞｣
真田十勇士のひとりで忍者の｢霧隠才蔵｣
伊賀の｢服部半蔵｣
隻眼の剣豪 ｢柳生十兵衞三巌｣
半人半獣の男｢権三｣
果ては｢蝿頭の宇宙人｣から外法の魔僧｢祥雲」
土蜘蛛衆までが登場…

('Д｀； ) 一体どこまで拡がるこの大風呂敷…

その筆の行く先は
まさに彼の筆のみが知るのだろう
我々にできるのはただそれ見守る事だけなのだ

お願いです。
私が死ぬまでに完結してください。
未読の方は、本書は傑作と成り得る要素を多分に秘めていますが、いかんせん永きに渡り未完です。今読むと必ずストレスが溜まりますので完結を待つことを勧めます。

当時、とうとう時代物に手を着けたかと思いましたが、ドッコイ流石は著者。得意の伝奇・SFの土俵にうっちゃってます。
もう登場人物からしてメチャクチャ。４巻の最後（本書では２巻目）の最後には蝿男（？）も登場。全く先が読めません。
著者の豊穣なイマジネーションにはただただ圧巻されるばかり。

「陰陽師」で新たなる読者層を広げている著者ですが、初期の伝奇ファンも忘れずに未完の作品にも手を着けてください。