映画ではハニバル中心で描かれていましたが、本では彼を追うメイスンもハニバルに負けないくらいこわーい存在で、実によく描かれています。
あんまりこういう怖い世界にハマってしまうのも困りものですが、やっぱりThomas Harrisはすごい!と思います。映画が好きだったかたには、是非本でも読むことをお勧めします。
■ 前半は猟奇小説、後半がロマンス小説という、キメイラのような不思議な構成。これほど評価がまっぷたつに分かれる小説も珍しいのではないでしょうか。「悪役レクター博士があまりに人気者になってしまったので彼を幸せにしないとシリーズを終われなくなってしまったのかしら? 『ターミネーター』で悪役デビューしたシュワちゃんが『ターミネーター2』で善い人になってしまったように」というご意見と、「シリーズを通して最初から著者はここに着地点を決めていたのに違いない、これは絶対確信犯だ」というご意見とがあるでしょう。客観的に見て、前者のスタンスで読むとかなりお粗末なのですが、後者で読むなら風雲急の展開に膝を叩いて笑いながら読めるのでは、と思います。ただしこの場合、前半をすっぱり忘れることが肝要です。前半に設定されている伏線が後半のロマンスへの移行であっさり棄てられてしまい、疑問となって山積したまま終わっていますので……。
猟奇度は「前作よりややアップ★★★★★」です。そもそも、「あんなもの」を喜んで食べているあの人を想像してしまうのがなんといっても猟奇です。素材が古いから、きっと不味いと思うんですけどねぇ…(汗)。いまどきの FBI 捜査官の矜持ってそんなものなのでしょうか……。