鎮魂をこめて
★★★★☆
架空戦記にありがちな、歴史上のifについて、戦術や作戦のレベルで論じる本。姉妹編と同様、非常に誠実に書かれているが、このレベルのことは、この本を読む読者にとっては「常識」のことではある。架空戦記の読者にはその「常識」を知った上で、あくまでエンターテイメントとして読んでいた層が一定数いたはずである。そういう読者層に対し「常識」を披露し、だから架空戦記はおかしいと言われても、「水戸黄門は史実と違います」と言っているようなものであり、なにか虚しさを感じる。史実と違った上で、楽しめればそれでいいんじゃない?と思う。もっとも、粗製乱造が異様に多く、設定がおかしければ文章もめちゃめちゃという作品群が大量生産され、このジャンルの消滅につながったわけで、硬質な文章でマジメに論じる本書には、架空戦記への鎮魂の意味合いはあろう。