西洋哲学への認知言語学者の挑戦
★★★★☆
レイコフによるこの本は記述研究的にメタファーを見た場合やや物足りない部分もある。誤解を恐れずに言えば、この本を初心者が読むと、まるで全ての言語の意味記述がメタファーで片付けられる錯覚に陥りかねないかもしれない(もちろん、学問的には一つの見識であり、様々なメタファー研究を踏まえた上で、このようなアプローチを突き詰めることとは別の話である)。
しかしながら、それを補ってあまりある神経学、言語哲学の深い思索に満ち満ちている。積極的に関連諸科学との連携を求め、そこに言語学の「場所」を見つけていく姿勢はとても興味深い。
また、メタファー論として、我々の言語運用におけるメタファーの幅広い影響を説得的に語る好著ともいえる。精神は身体的経験基盤を持つということが意味するもの。それを読み解くうち知的興奮と言語哲学の叡智を感じるに違いない。
レイコフの他の著作を読み、認知言語学の入門書を読んだ上で読むと、一段と多くの知見を与えてくれる本かもしれない。