こうした「戦略系コンサル本」にはやや食傷ぎみ、という人のために、ほかにはない本書の特徴を指摘するならば、著者のやや異色と思える経歴(芸術系修士)からくる「人間の感情に重きを置いた視点」と、「改革」の各段階において、特にリーダーがすべきこと、してはいけないことが適切なエピソードを交えながら、整理されてかつ明確に語られているといった2点が挙げられる。2つ目にあたる部分では、主な事例として「多国籍製薬企業の合併プロジェクト」と「子会社改革プロジェクト」の2つを大きく取り上げている。
とりわけ著者の経歴は、「アルファベット3文字略語」と「パワーポイントフローチャート」の出てこないコンサル本として、本書を印象的なものにしている。もちろん紹介された成功例のように、人間の感情に重きを置いたところで成功が約束されるほど、単純な解ばかりではないだろう。しかし、安直に欧米流の「リストラ」、「成果主義」といった表面的な現状打開策を選択しがちな昨今、経営者にとっては参考になる部分が多い。(杉 良介)