ところが源信はこれでもか、これでもかと大蔵経の中からかき集めてきた具体的な地獄のようすをリアルに描きだしている。とくに印象に残ったのは「刀葉の林」という地獄である。
一本の樹の上に「端正厳飾」というから美しくてきれいに着飾ったねーちゃんが立っていて下にいる男を招く。スケベ心を起こした男はそのねーちゃんに近づこうと樹を上っていくと・・・なんと木の葉がみんな刃物でできている!男は傷だらけ血だらけで樹を登ってゆくとねーちゃんは何と樹の下にいるのだ。ねーちゃんは下から男を見上げて「あなたが好きだからここに来たのよん、なんで私のところに来て抱いてくれないの?うっふん」とばかり誘惑する。男は「欲心熾盛にして」これを見て、今度は降りてゆこうとすると「刀葉上に向きて利きこと剃刀のごとし」というわけで、また傷だらけ血だらけになる。やっとの思いで下に降りてくると、ねーちゃんはまた上にいる。やれやれ、その繰り返しが果てしなく続く。
いやー、怖いですねー、ホラーですねえ、スプラッターですねえ。では、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。
割と原文自体が分かりやすいし、校注が比較的多いので高校程度の古文ができれば何とか読めると思う。