オープニングを飾るトラックは、いみじくも「Warm Sound」と名づけられている。揺らめくようなフールートとファンキーなキーボードに乗って、長年のコラボレーターであるMozezが夢見るようなソウルを展開するナンバーだ。Mozezは、流れるような弦楽器に彩られたララバイ「Over Our Heads」にも登場する。新顔のTina Dicoが柔らかな歌声を聴かせる「Home」では、静かにかき鳴らされるギターにブラスが注意深くからんでいく。「The Space Between」は70年代のフォーク・ジャズをテクノ調にアップグレードしたもの。「Passing By」と、初期のジェイムス・テイラーの甘いイノセンスを思わせる「In Time」に参加しているSophie Barkerの貢献ぶりも忘れるわけにいかない。仕上げのアクセントを入れるのはSia Furlerだ。彼女の少々かすれた声は、「Somersault」と「Speed Dial No 2」に風格を与えている。
全編にわたって、バンドはさまざまな楽器や効果を繰り出してくる。サイケデリックな表情を見せることもあるが、冷たいテクノロジー偏重主義に陥ったりはしない。指とギター・ストリングが生み出す響きからかけ離れた音楽には決してならないのだ。『Simple Things』を気に入ったリスナーには、大のごちそうと言えるだろう。(Dominic Wills, Amazon.co.uk)