合理的観点からの戦争責任論として、一つの究極形
★★★★★
ライブラリー版で上下2巻にわたる労作である。
自らの戦争体験と豊富な史料とに基づき、日本の戦争責任について極めて幅広く、かつ明晰に分析している。戦争責任論としては、数多ある中でも一つの究極形であろう。展開される議論の快刀乱麻振りには、ある種の爽快感すら覚える。
ただ、今日的観点からすれば、あまりにも簡単に、当時の社会にあった不合理で曖昧模糊とした気分のようなものを、合理的基準から外れる「取るに足らない、ばかばかしいもの」として斬って捨てている点が気になる。そうした議論から取りこぼされているものを取りこぼしたままでいることもまた、この本を手に取った読者としては知的怠慢ということになろう。