主張の裏づけに若干の心残りアリ
★★★☆☆
既存企業にとっての新規事業が「成功への賭け」であることは本書がよく説明しており、
またその際の要として人的資源に大きな比重を置いている点もユニークで面白い。
ただ唯一残念な点は論理が非常に定性的であり、
定量情報による「ガツン!」とした納得が容易に得られないところにある。
例えば新規事業をマイルストーンの設定により進捗管理することは難しいとして、
自信度チェックなる代替案を提供しているが、判断基準が非常に定性的で説得性に欠けている。
また、マイルストーン未達を繰り返しながらも自信度チェックにより成功した例として
フィリップスの「ナビテック」プロジェクトを取り上げているが、
その背景がうまく説明されておらず「自信度チェック」を納得させる根拠が乏しい。
「企業は新規事業支援チームやベンチャー企業のインキュベイタにより
独立支援を行うべき」という主張に対する反論にしても、
ベンチャー企業はもっと偶発性の高い方法で成功に至っているように「見える」、
体系的な開発プロセスの影響を受けているようには「とても思えない」、
といった主観表現で読者を納得させる客観論理が抜けている点も非常に惜しい。
ともすると「行間を読める」読者にとってはまた違った文脈が見えてくるのかもしれないが、
実務側面に立脚した理解を求める方々には少々雲をつかむようなもどかしさを覚えるかもしれない。