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日本語の歴史1 民族のことばの誕生 (平凡社ライブラリー)

価格: ¥1,404
カテゴリ: 単行本(ソフトカバー)
ブランド: 平凡社
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日本語の歴史第一巻 ★★★★★
 一巻「民族のことばの誕生」は刊行のことばに続いて、さまざまな言語起源説を列挙するところから始まる。太古のロマン、というような心情からはよく考えられ続けるのかもしれない起源説はしかし、これが始まりだと一義的に決めることが原理的に不可能に近いし、そんなことをするよりもよっぽど興味深い事柄がことばには無数にあることが、後に続く全巻の全章で明らかにされていく。そんな意味では第二章・第三章も騎馬民族渡来説、日本の各地域の人々についての形質学的分類、血液型(!)の地域別分布などから帰納した議論など、今や真面目に聞けないような類の議論もある。
 
 そうなってしまったのも、この第一巻がカバーする内容が、末尾の風土記の記述は例外にしても、同時代に日本で作られた文献が存在しない時代に専ら関わっているからだ。そんな環境だとさまざまな説が唱えられるのを止めることが出来にくい。最古の文献資料である記紀の成立事情、その記されている「歴史」としての神話には濃厚に当時の政治状況が反映されているし、「風土記」でさえも口承伝承の型を伝えているとはとてもいえないことを著者はこの巻で説く。記紀、万葉集、風土記は第二巻・第三巻で詳しく扱われている。本巻全体で繰り返されているのは、文字資料・文献が不在であることが日本語の歴史を源流まで辿ることをある時点で不可能にする、という当たり前のことだが、この一冊で執拗にそれを反復することによって、言語が可能にすることの幅の広さを逆説的に伝えようとしているように読める。

学問の醍醐味 ★★★★★
本シリーズの第一巻は、日本人が文字を使い始める前までを扱っています。

当然、日本語で書かれた記録などがいっさいない時代の日本で、どのような言葉が使われていたか、比較言語学や歴史学など様々な視点から考察していく過程が、公平かつ非常にわかりやすく書かれていて、知識の少ない私でもどうにか理解できました。

基本的な知識は、本文とは別に囲み記事の中で手際良く解説されています。
(ただ、音韻論や文法の基礎的な部分については詳細な解説がない)

魏志倭人伝に出てくる僅かな固有名詞から、当時は既に日本語が使われていたと結論するところや、動詞・形容詞の活用語尾から独立して助詞や接続詞ができていく過程など、興味深く読めました。

元本は古い本なので最新の知識は得られませんが、学問の面白さを十二分に味わえる良書です。
日本人の起源から日本語の成立に迫る ★★★★★
 古典的名著の復活ということだが、今日でも価値の失われていない部分も多いが、今日の目から見て多少検討される余地のある部分とがある。
 基本的には、やや時代を感じさせる穏やかで誠実な文体で、日本語の成立について迫る。国語学、比較言語学のみならず、考古学や人類学の成果も紹介、引用しつつ、丁寧に描写しているので、専門外の人であっても非常に読みやすい。伝統的な国語学でさかのぼりえない時代については、比較言語学や他言語や、考古学、人類学を援用して日本語成立のストーリーに迫っていく。そこで地道に積み上げられる議論は、大筋において今日でも価値を失うものではない。
 ただし、例えば、本書は考古学的部分においては、江上波夫の騎馬民族王朝に拠るところが多いが、今日ではそのままの形でこれを支持する人はほとんどいないであろうし、母音調和やアルタイ語族説も、現代の言語学の立場からは疑問が呈されている部分もある。これらの部分には、十分注意が必要である。