「数学の哲学」って実は「数学と哲学」
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数を定義するところから始まって、集合論に進み、命題関数を導入して、数学を再定義、というのが本書のあらすじです。いわゆる数学の基礎に関する論理主義のプロジェクトと呼ばれているものです。テクニカルな話は最低限ですので、逆にラッセルのストラテジーが顕わになっているような気がします。
このプロジェクトにおいては、数を集合の集合として定義できれば、後はテクニカルな問題のはずでした。ラッセルのパラドックスは何とか切り抜けましたが、ゲーデルによってこのプロジェクトは壊滅的な打撃を受けることになります。でもこれはあくまでもテクニカルな問題です。哲学的な問題がどこにあったのかは微妙です。
ラッセルは論理学者として数学にアプローチしたに過ぎないような気がします。この頃から論理学と数学の垣根は曖昧になってしまいました。フレーゲの立場は微妙です。数学者なのに言っていることが哲学者みたいですよね。ラッセルと正反対です。ラッセルは哲学者なのに数学者みたいですよね。
数学の哲学って数学のテクニカルな話をすればいくらでも難しくなりますが、それは数学の難しさであって、哲学的な話はそれとは別のような気がします。実在論だの反実在論とか言ってもね。今時そんなことは言いませんか?