卓抜の松田聖子論
★★★★★
小倉氏による「山口百恵」「松田聖子」というふたつの表象の知的な解読は、カル・スタの最良の成果の一つであると同時に、「フェミニズム嫌い」二こそぜひ読んでもらいたいフェミニズム入門書である。とりわけ、本書後半の「松田聖子論」は圧巻で、本書全体が『松田聖子論』というタイトルになっているのも頷ける。しかしながら、氏が高く評価する「松田聖子的なるもの」が、実はバブル経済に支えられたものであったこと、バブル崩壊後の今、「山口百恵的なるもの」が香山リカの言う「プチ・ナショナリズム」とともに日本社会に回帰していることも否定できない。こうした状況をどう考えていくか、それは読者に与えられた課題なのかもしれない。